>  今週のトピックス >  No.2811
改正雇用保険法可決、4月より「就職促進定着手当」が創設
● 育児休業給付の給付率アップが注目されているが…
  3月28日、育児休業給付率を引き上げる内容を中心とする「改正雇用保険法」が参院本会議で可決、成立した。ニュースなどでは現在、休業前賃金の50%と定めている給付率を、半年間に限って67%に引き上げる内容(No.2723)ばかりが注目を集めているが、他にも「就業促進定着手当」の新設や「教育訓練給付」の拡充などもあり、全体的にみても大きな改正となっている。
  今回は「就職促進手当(再就職手当)」の拡充について取りあげてみる。
● 再就職先での賃金低下を補填する意味合いも
  改正雇用保険法により、4月1日から「再就職手当」の拡充策として創設された「就業促進定着手当」だが、新しい制度なので多方面から興味をもたれている。
  この「就業促進定着手当」とは、
  @再就職手当の支給を受けた者
  A再就職先に6ヶ月以上雇用保険の被保険者として雇用された者
  B再就職先での6ヶ月間の賃金の1日分の額が離職前の賃金日額を下回る者
  上記の全ての条件を満たす者に、基本手当の支給残日数の40%を上限として、低下した賃金の6ヶ月分が支給されるというものである。受給には、再就職から約5カ月後に「ハローワーク」から送られる「就職促進定着手当」の支給申請書に必要事項を添え、提出することが必要となる。
  そもそも再就職手当とは、失業保険の基本手当を受給し終わる前に就職が決まった場合のご褒美的な意味合いで支給される手当で、失業期間を作らず早期の再就職を促すためのものである。1年を超えて勤務することが確実な安定した職業に就いた際に、基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上あり、一定の要件に該当する場合に支給されるので、意外と過去に対象となった方も多いかもしれない。
  今回の「就業促進定着手当」は、政府は失業者が就職活動をする際に、再就職先の提示する賃金が離職前の賃金より低い場合、そのまま就職せず失業状態を継続する傾向があると考え、その低下した分をカバーすることで再就職への意欲を高める目的でこの制度を創設した。ただ、本当に狙っている効果があるのかどうかは、これから実際に利用した人たちの声や申請者数などを分析していくことで明らかになるだろう。
  政府はこれまで、雇用問題に関しては介護などの人材の需要のある業種や職種への労働移動をスムーズにするために企業側に助成金を支給する等の施策を講じているわけだが、今回は賃金の低下という労働者側のリスクについても考慮した制度を設けた。このタイミングで新たな試みに踏み切った点は評価されるのではないだろうか。
  
庄司 英尚 (しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所 所長
社会保険労務士 人事コンサルタント
  福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。
公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/
  
  
2014.04.28
前のページにもどる
ページトップへ