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再婚を考える男性に影響も?遺族年金改正の負の側面
  今週のトピックス No.2807 でも紹介したとおり、平成26年4月から「妻が亡くなった場合」にも遺族基礎年金が支払われることになった。まだ中高齢寡婦加算や寡婦年金などの男女平等を説明できない給付は残っているものの、改善に向けた第一歩として一定の評価がなされている。
  しかし、再婚を考えている男性にとっては悩み深い問題を抱えることになりそうだ。
● 再婚の割合は年々上昇
  以下の表は、男性の「婚姻数」と「再婚数」を5年毎に示したものである。
【年次別の婚姻数および再婚数(男性)】
婚姻数 婚姻数 うち再婚数 再婚の割合
平成9年 775,651 105,644 13.6%
平成14年 757,331 123,788 16.3%
平成19年 719,822 135,406 18.8%
平成24年 668,869 126,952 19.0%
(厚生労働省:平成24年 人口動態調査)
  過去十数年にわたり、婚姻数自体は減少し続けているが、その中に占める「再婚の割合」は上昇を続け、近年では20%に迫る勢いとなっている。
● 再婚は「3年以内」が約4割
  次に、何年以内に再婚したかの期間を見てみよう。
  【前婚解消後から再婚までの期間(男性)】
1年未満 1〜2年 2〜3年 3〜4年 4〜5年 5〜6年 6〜7年 7〜8年 8〜9年 9〜10年 10年〜
16.2% 13.0% 11.6% 9.8% 8.0% 6.9% 5.8% 4.9% 4.2% 3.6% 16.1%
(厚生労働省:平成24年 人口動態調査)
  10年以上の間を空けて再婚に踏み切った比率の多さも見逃せないものの、比較的短期間での再婚を果たしている人が多く、3年以内の比率を合計すると4割を超えている。
● 遺族年金改正の影響で、再婚数は減ってしまうのか?
  遺族基礎年金は再婚した場合は失権となり、給付を受けることができなくなる。厳密には子どもに受給権は残るものの、同居の父または母がいる場合は支給停止となり、事実上年金を貰えるわけではない。従来から幼い子どもを抱えた未亡人が再婚に踏み切れないまま歳月を重ねる事例もあるように、「年金」か「再婚」かの二者択一に悩む人も多かった。
  今回、遺族基礎年金が父子家庭にも拡大給付されるようになったことにより、妻を亡くした夫についても同じ悩みを抱えてしまう可能性がある。
  遺族基礎年金は、子どもが1人の場合、年間で約100万円(77万2,800円+22万2,400円)の給付となる。一方、現在の父子家庭の平均年収は約380万円という水準であり、決して多くはない。100万円の収入が無くなることで再婚に踏み切れない男性が出てきても不思議ではない。
※厚生労働省:ひとり親家庭の支援について(平成26年3月)より
  父子家庭への遺族基礎年金は、妻が平成26年4月以降の死亡でない限り対象にはならないため、まだ該当者も少なく再婚数の減少云々を議論する段階ではないだろう。しかし、当事者となった男性は、遺族基礎年金という経済的サポートを振りほどかない限り「再婚」というゴールにはたどり着けない。
  子どもが高校を卒業するまでは「遺族基礎年金」を受給し、その後に「再婚」に踏み切ろうとしても、早めに“婚活”をしない限り「再婚」の可能性が減ってしまうのはデータが示すとおりだ。
  今回の遺族基礎年金の改正がどのような影響を与えるかはわからないが、20%に迫ろうとしている再婚数を減らすようなことになれば、少子化対策に逆行するような結果をもたらしかねない。
  男性諸氏には「お金」より「幸せな家庭」を選んで欲しいものである。
2014.05.19
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