>  今週のトピックス >  No.2880
平成25年度の国税庁による滞納整理の訴訟提起は146件
● 「滞納処分免脱罪」の告発は過去最多の6件
  国税庁が今年7月に公表した平成25年度租税滞納状況によると、新規発生滞納の抑制及び滞納整理の促進により、今年3月末時点の滞納残高は15年連続して減少、ピークの平成10年度の約41%まで低下している(今週のトピックス2872 参照)。
  同庁では、処理の進展が図られない滞納案件については、差押債権取立訴訟や詐害行為取消訴訟といった国が原告となる訴訟を提起したり、「滞納処分免脱罪」による告発を活用して、積極的に滞納整理に取り組んでいる。
  原告訴訟に関しては、平成25年度は146件(前年度155件)の訴訟を提起した。訴訟の内訳は、「差押債権取立」12件(同25件)、「供託金取立等」7件(同15件)、「その他(債権届出など)」120件(同108件)のほか、特に悪質な事案で用いられる「名義変更・詐害行為」が7件(同7件)となった。そして、係属事件を含め154件が終結し、国側勝訴が33件、一部・全部敗訴が4件などだった。
  また、財産の隠ぺいなどにより滞納処分の執行を免れようとする悪質な滞納者に対しては、滞納処分免脱罪の告発を行うなど、特に厳正に対処している。同免脱罪の罰則は、3年以下の懲役か250万円以下の罰金に処し、またはこれを併科とされている。平成25年度は、1年間の告発件数では昨年に引き続き過去最多となる6事案を同罪で告発した。
● 免脱罪の例:不動産の売却代金を他人名義の口座に振り込ませて財産を隠ぺい
  例えば、不動産取引業を営む滞納者Aのケースがある。
  Aは、所得税など約3,000万円を滞納しており、徴収職員がAに現状を確認したところ、不動産取引業は廃業し、生活保護の申請を考えているとのことだった。しかしAは、滞納処分の執行を免れる目的で、(1)Aが事業のために取得した不動産を他人名義に所有権の移転登記を行い、(2)その不動産を売却した代金3,000万円をAが管理する他人名義の預金口座に振り込ませ、(3)このほかに、Aが所有していた現金約2,000万円を自己が管理する他人名義の預金口座に振り込むことにより、財産を隠ぺいしていたことが判明した。
  国税局の告発に基づき、Aは滞納処分免脱罪で起訴され、懲役1年6月(執行猶予4年)、罰金50万円の刑が確定している。
  なお、「名義変更訴訟」は、国税債権者である国が、国税債務者である滞納者に代わって、滞納者に帰属しながら滞納者の名義となっていない財産の名義を滞納者名義とすることを求めて提起するもの。また、「詐害行為取消訴訟」は、国が、滞納者と第三者との間における債権者(国)を害する法律行為の効力を否定して、滞納者から離脱した財産をその第三者から取り戻して滞納者に復帰させるために行うものだ。
  
浅野 宗玄(あさの・むねはる)
株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト
1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に『住基ネットとプライバシー問題』(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍『生命保険法人契約を考える』
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.html
  
2014.09.01
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