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生保営業のヒント
 T.日常のマネジメントのヒント
マネジメント1 タイトル
「頭」が動けば、「尻尾」は動く?
  「拍手」と「握手」、そして「表彰」…。
  これが「転換全盛時代」から、バブルがはじけて「平成不況」へ突入するまで、生保業界のマネジメントの主軸だったのではないでしょうか?
  高い予定利率の中で、ある生保は、豊富な「転換契約対象リスト」へアタック。ある生保は、転職の方々の採用で、以前のキャリアの中で築かれたベースマーケット(イニシャルマーケット)へアタック…、等々。
  いずれにせよ、豊富な行き先に支えられていました。
  今、状況は大きく変わりました。「不況の時代」です。
  今、仕事のうち8〜9割が行き先を見つけ、見込みを育てること、ですよね。

  「拍手」と「握手」、そして「表彰」のインセンティブも必要でしょうが、さらに必要なのは「行 き先を見つける足腰の強い行動力」と「見込みを育てる知恵のプラス」ですね。
  「頭」が動けば、「尻尾」は動く!
  この当たり前のリーダーの率先行動。そして、「共感・共苦・共働」のリーダーシップをさらに発揮するとき、ですよね。
  「知恵は机上で生まれない」「知恵は現場にあり」と。
「皿回し」をするな?
  「働く」と「動く」は、大違いだ!
  私が駆け出し…、小さな田んぼの中の機関長だったころ、先輩から叱られました。そのころ、私の車は年間走行距離が4万キロを超え、「働いている」と自負していました。
  しかし先輩は、「それはおまえの自己満足だ。ただ動いているので、働いてはいない」
  ・おまえは「便利屋さん」か?
  ・おまえは「皿回し屋さん」か?
  ・いつまで職員さんを、自立ができない「お皿」にしてるんだ?

  「挙績目標を成し遂げながら、人を育てるのが機関長の仕事だ。自立自転する職員さんを育てるん だ。だから、一回一回の支援行動は、挙績だけではなく育成目的を明確にしろ!」
  ・その職員さんの、どんな課題を解決したいのか?
  ・その職員さんへ、何を教育・訓練したいのか?
  ・その職員さんを、将来は組織長にしたいのか、そうでないのか?
  「おまえ一人の「動き」はたかが知れている。みんなの力をお借りしろ。だから人を動かすと書いて「働く」と読むんだ。これが機関長の仕事だ」と。

  理屈はわかりますが、そのときの私は反発していました。
  ・赴任当初、職員さんの平均年齢が54歳超(男性の方のみですと60歳超)。
  ・公共交通機関はバスのみ(特に夜間の本数が少ないし、終バスが早い)。
  ・赴任当初、車を持っていたのは私のみ。
  「この現状を分かって言っているんですか? 私が動かなかったら、毎月の挙績目標もできませ んよ」。
  でも今はわかります。しっかりしたビジョンがないから、目の前の挙績目標に追いまくられていたことを。若気の至り…、重ねた数々の失敗のうちのひとつです。連載第2回“7.ビジョンのない経営は「漂流」”“6.「レトロの汽車」から「新幹線」へ!”で述べたのも、そのためです。
  とうとうこの機関を、「レトロの汽車」から「新幹線」へ脱皮させることはできませんでした。
  しかし、その後の転勤からは、赴任当初の状況が大変であればあるほど、しっかりした「ビジョンの共有」と「組織体制づくり」が大切。『着実に成長を続ける機関づくりが機関長の仕事』と、肝に銘じさせてもらいました。
  プロ野球・楽天イーグルスの野村監督も言っていました。『失敗と書いて成長と読む』、積極的な行動の失敗は、必ず後の成長の因になる、と。
全員と一日一回以上の対話を!
  「○○さん! △△くんによろしく! また明日!」
  「○○さん! 明日はきっと良いことがあるよ! また明日!」
  「○○さん! 今日は良かったね! 明日はもっと良いことがあるよ! また明日!」等々。

  「これまで、もう辞めたいと思ったことは、ありませんでしたか?」との私の質問に、「それはあ りましたよ…、何回か。その時々の動機はさまざまでしたが…」と、ある優績者の方。
  「それをどのように乗り越えて来られたんですか?」
  「時間が解決してくれたのかな…。それに、事務所から帰るそのときに、タイミング良く絶妙な言葉を添えた「○○さん、また明日!」との機関長さんの言葉に、次の日、ひかれるように出勤していくうちに解決していたのでは…」とのことでした。
  そして翌朝、機関長が
  「○○さん、おはよう! 今日は良い天気だね。きっと良いことがあるよ」
  「○○さん、おはよう! 今日は大安吉日だよ!」
  「○○さん、おはよう! 今日の午前中は××社長さんに会える日だね」等々。

  こんな大優績者の方にも、機関長のポジティブな、心のこもった短い対話が、大きな励みになり、ピンチを乗り越える力になってきたんだ、と思いました。

  私も朝と夕方は、事務所に居ることを原則にしていましたが、会議などで出かけてしまい、どうしても事務所に居られないことがありました。そんなときの対話の方法を先輩から教えてもらい、実行しておりましたのでご紹介します、ご参考まで。
  それは、会議が終わって事務所に帰った夜または翌朝、挙績グラフにその日の変化を、必ず表示すること。
  ・報告のみあった
  ・申込書が提出された
  ・保険料が入金された
  ・診査が終わった
  ・契約が成立した
  ・採用候補者を見つけた 等々
  「職員さんはその表示を見て「機関長さんは、自分の活動を知っていてくれる…」。これが大事な対話だ。人数が多くても、時間が短くてもできる対話だ。そしてもうひとつ、表示が終わったらグラフを見ながら一人ひとりの顔を思い描け、そして、翌朝にかける言葉を考えろ」と。

  「人は強いようで弱い、弱いようで強い。だから、励ましの対話がお互いに大事なんだ…」と。
(つづく)
2009.06.29
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須長 光男 プロフィール
[経歴・バックグラウンド]
 宮城県出身
 明治生命(現 明治安田生命)入社、機関長、機関経営コンサルタント、
 支社長を経て本社営業教育部で販売技能開発、教育研修を担当。
 平成8年より(株)セールス手帖社保険FPS研究所の企画開発部長と
 なり、生保に関するテキスト、マニュアルの企画・執筆の一方、
 セミナーも数多く行っている。
[主なセミナーテーマ]
 「事業承継・相続対策プラン販売のすすめかた」「事業保険見直し販売のすすめかた」
 「公的年金知識をアプローチとした生命保険の販売」「FP知識を活かした実践的販売手法」
 「採用・育成のヒント」
 「セールスマネージャーの実践的マネジメント」
 「目標実現のためのホロニックマネジメント・トレーニング」
[講演・セミナー実績]
 全国各地のJA共済連LA向けセミナー
 簡保、全外協等の大会における各種講演
 生保各社の機関長、組織長、営業職員向けセミナー
 生保各社の機関長・組織長合同ホロニックマネジメント・トレーニング
 その他、大手企業管理責任者向けセミナ−や中小企業経営者を対象とした講演等、
 年間60〜70回実施。
須長 光男