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知ってビックリ!年金のはなし
第1回 公的年金に多大な期待は禁物
 
たったこれだけ・・・
「夫は、中学を出てからずっと60歳まで会社で働いてきたんですよ、それで年金の裁定手続きしたら年金額が月額21万円ですって、もうがっくりですよ」
 以前、年金相談にこられた奥さんからお聞きした言葉です。
 現在では、58歳時点の年金履歴の通知およびその時に申し込める年金見込額の回答という社会保険庁のサービスがあるために、相談を受けても、年金の見込額を別途調べて差し上げるということや、お話を聞いてから大体の年金額を予想してお教えするということも減ってきました。
 以前は年金予想額をお話しすると、「この程度ですか?」とがっくりされる方が沢山いらっしゃいました。特に30年・40年と会社勤めが長い方が、予想額と現実の格差にガックリされることが多かったのです。年金額が高水準だった親の世代をみてきて大きな期待があったのでしょうか。
 しかし、今は社会保険庁のサービスのおかげで、お話をする前にすでにご自分の予想年金額についてはご存知の方が増えてきました。ですから、がっくりされる様子を目の前で見る機会も減ってきました。
 でも、支給額が増えたわけでもないのですから、がっくりされなくなったのではなく、多分社会保険庁からの年金見込み額の通知をみられて、ご家庭で年金相談会にいらっしゃる前に一旦がっくりされているのだと思います。幸いそれを目にする機会が減っただけなのでしょう。
月17万円は立派な年金です
 公的年金は「老後の生活を支える大切な糧」ですから、年金額に感心をもたれる方も多いのですが現実は非常に厳しいです。経験相場的には、支給額が月額20万円(加給年金を除いて)を超える人は稀、滅多にいらっしゃいません。月額17万円(年額200万円)を超えたら、「立派な年金」と考えても良いでしょう。
 冒頭の奥さんのご主人は加給年金付きの21万円だったのか、そうでなかったのかちょっと記憶が定かではないのですが、仮に加給年金無しの年金だったとしても月額18万円はあるのですから、一般相場よりはるかに多い年金です。
 やはり中学を出てからずっと働かれていただけのことはあります。しかも、44年以上厚生年金に入られていた方は60歳から定額部分が支給されるという、支給面での優遇もあります。
 「奥さん、がっかりされるお気持はわかりますが、奥さんのご主人の年金は相場的にみれば他の方よりもかなり良い年金なんです、長く働かれてきたご主人を労わってあげてください。それに奥さんの国民年金をプラスしたら少なくても月額で25万円(年300万円)を超える金額になるはずですから、老後の家計の心配は他の一般的な方より少ないと思いますよ」
 と、奥さんに、すこしがっかり感を取り除くお話をしました。
共稼ぎ以外は公的年金だけでの生活は厳しい
 普段、私は「老後年金だけで生きていけるのは、『ご夫婦の場合どちらもが共稼ぎの勤め人の場合』であり、それ以外であれば『夫が勤め人・妻が専業主婦の場合は、夫の給与水準が高い大手企業にお勤めの方』あるいは、『職域加算という一般の民間企業より支給率が良い独自の上乗せがある公務員』でないと厳しいかな」と説明しています。
 夫がサラリーマンで妻が専業主婦の場合は、やはり妻の年金額の少なさ(国民年金だけだと40年加入で6.6万円)がネックになります。またご夫婦で自営の場合はお互いの満額の国民年金を合わせても年額158万円(月額13万円強)にしかなりませんから、かなり老後が厳しくなります。
2006.10.02
執筆者:桶谷 浩
[経歴・バックグラウンド]
大学卒業後、生命保険会社に勤務その後退職し、学習塾等に勤務
2001年社会保険労務士として独立開業
2002年FP登録(AFP、後CFPに)
現在、公的年金を中心に据え、成年後見・介護制度を併せて、広く老後の生活設計を考えるというテーマで、相談業務、講演、執筆など活動中。

2007年4月に合同会社電脳年金を立ち上げ。
[保有資格]
社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(CFP)、行政書士
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