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知ってビックリ!年金のはなし
第10回 現況届の運用が変わりました
 
現況届って何ですか?
 老齢基礎、厚生(共済)年金は終身これを受け取ることができます。
 終身というのは、当たり前ですが、死ぬまで受け取れるということ、死亡したらその時点で終了します。死亡したら「死亡届(年金受給権者死亡届)」を社会保険事務所へ提出することになっているのですが、忘れる方もとても多い。
 そこで、年金を受給していらっしゃる方には、毎年1回、誕生月に、「生きているから年金を受ける権利がありますよ」ということを届け出る=現況届(年金受給権者現況届)の提出が義務付けられています。「現況届」が提出されませんと、提出されるまでの間、年金の支払いが一時止まることになります。

原則と例外が逆転しました
 この現況届、昨年(平成18年)の10月より原則提出から原則不要という風に運用が変わりました。もう耳にされた方も多いかと思いますが、実際に運用を始めたのが12月からですので、今回はここをおさらいしておきましょう。
 従来とは異なり、現況届を提出されなくても、自動的に住基ネットと社会保険庁の持つデータとの照合をすることにより、確認が取れれば年金を支払うという仕組みに変わったのです。つまり「何もしなくてもよくなった」ということ。もし受給権者に死亡の事実があり、かつ前述の死亡届が未提出の場合は、死亡の事実の入った住基ネットでは確認されませんから、死亡した人に年金を支払う等の誤払いは防止されることになります。
着々と進む、住基ネットの利用
 住基ネットが導入された当初、導入に伴ういろいろな利便性の説明がありましたが、中には「住民票の取得がしやすくなる」といった、何がメリットなのかわからないものも含まれていました。しかしこのような住基ネットも使い方しだいで、事務を簡略化することになると、本当の意味で、メリットを実感することができます。資料によると2600万件の確認はがきが不要になるということで、はがきの紙代、印刷代、管理費、提出された現況届の一定期間保管その他お役所の事務軽減、メリットは計り知れません。
 それでは受給権者のほうはどうなの? もともと年に1回はがきを返送するだけだから、事務側に比べて大した軽減にならないのでは、と疑問に思われるかもしれません。
 しかし、若い頃ならともかく、年齢的に能力の鈍った高齢のお年寄り(特に80歳を超えたりすると)にとっては、はがき1枚といえども書類の提出は大変、忘れてしまう場合も多いのです。そして、提出を忘れると年金は一時的に差し止められますから、すぐに生活に響いてくる(あとで提出すれば差し止められていた年金は支給されますが、どうしても支給時期は遅れてしまいます)という大きな問題に直面するのです。しかも昔と違って、お年寄りだけの世帯が急増していますから、現況届の原則廃止はこういうリスク軽減のためにとてもメリットがあるのです。
原則があれば例外もあります
 原則、提出不要とされた現況届ですが、まだまだ提出を必要とされる方もいらっしゃいます。社会保険庁のデータと住基ネットの情報が相違している場合や、外国籍の方や外国にお住まいの方などです。
 あと地域によっては、つまり住基ネットに参加していない市区町村(杉並区、国立市、矢祭町)にお住まいの方は、住基ネットが使えませんから従来どおりの方法(郵送)による提出が必要とされています。
 また加給年金をもらっていらっしゃる方は、生計維持確認届を提出して受給要件の確認が必要になり、また障害年金で障害の程度が増減する可能性のある傷病(要するに切断等病状が完全固定する場合以外)の場合は「障害状態確認届」が必要となります。これらの提出についても住基ネットでは対応できませんので通常のとおり郵送で別途資料を提出する必要が生じてきます。
今後も住基ネットの利用範囲は増えて行くようです
 厚生年金と国民年金に関しては、住所変更も住基ネットを利用するといったことなども検討されています(住所移転の場合も届出が不要になる)、たとえばお年寄りが一人で生活できなくなり、子供の所に身を寄せたという場合などは何の手続きもしなくてすむようになるかもしれません(これはまだ検討段階ですが)。
 すでに年金以外、例えば旅券の申請時でも、住基ネットがあれば、住民票の添付を不要とする扱いは一昨年から始まっており、その他各官庁でもあれこれ住基ネットの利用を考えているようです。この流れはますます加速していくようですが、今回の年金制度の住基ネットの利用はかなりインパクトが大きいようです。
2007.01.23
執筆者:桶谷 浩
[経歴・バックグラウンド]
大学卒業後、生命保険会社に勤務その後退職し、学習塾等に勤務
2001年社会保険労務士として独立開業
2002年FP登録(AFP、後CFPに)
現在、公的年金を中心に据え、成年後見・介護制度を併せて、広く老後の生活設計を考えるというテーマで、相談業務、講演、執筆など活動中。

2007年4月に合同会社電脳年金を立ち上げ。
[保有資格]
社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(CFP)、行政書士
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