第100回 「カラ期間」は第3号期間と似てはいるのですが…
25年に足りない方から相談を受けたとき
現場で相談をしていると、年金を受けるのに必要な保険料納付・免除期間25年に満たない人は相変わらず多く、そして実際に時々お見受けします。
そして、その満たない人たちは、
(1)本当に年金を貰えない人
(2)本当は貰えるけれど、年金事務所では把握できない人
に分けられます。(2)の方は俗に言う「カラ期間」などで救済される方です。
さて、またまた先日の相談でも、この25年に満たない方がいらっしゃいました。
いろいろとお話を伺うと、夫がずっとサラリーマンであり、結婚は昭和40年代で、昭和61年までの「サラリーマンの妻であって任意加入をしていないカラ期間」を使えば年金はもらえる様子でした。
早速、「年金はもらえる」旨の説明をし安心してもらい、年金の手続についての準備を整えました。
全く同じ条件なのに
昭和61年4月からは、年金制度が変わり、「第3号被保険者」の制度が始まりました。それ以前はサラリーマンの妻は、夫が会社員・公務員(第2号被保険者)ならば国民年金は任意加入で、任意加入をしない限りその期間は全く年金額に反映されなかったのとは全く異なる状況になりました。
サラリーマンの妻に関しては昭和61年以前より、制度として良くなったということは明らかです。妻が保険料の負担をしないのは同じ、しかしその期間が以前は年金額に反映しない「カラ期間」だったのがその後は第3号被保険者として納付済期間となったわけですから。将来受け取る年金額が全然違います。
しかしながら困ったことも
そんな第3号被保険者、お金に直結するがために「扶養」という条件がついています。それが時々困った厄介なことを引き起こしたりします。
具体的には、「第3号の手続をしていなかった場合の事後処理」のやり方などについて現れてきます。
「第3号被保険者の届出が遅れたときには、届出から2年前まではさかのぼって第3号被保険者の期間となりますが、それ以前の期間は、「保険料未納と同じ取り扱い」となっていたのを、平成17年3月末までの期間は、特例の届出をすることにより、「2年以上前の期間も第3号被保険者期間として取り扱い、将来その分の年金を受け取ることができるようにした」、これが第3号特例届出です。その特例の届出で気を使うのが、「扶養」の認定です。本来は第3号となるときにこの認定をしなければならなかったのが、遡及となるとずいぶんと後になってから該当期間の扶養である状況の確認作業に入るわけですから大変です。
多くは「健康保険の扶養になっている」ということが証明できてOKとなるのですが、時々証明に苦慮することがあります。
私が体験した例では、妻が第3号特例に該当するであろうと思われましたが、夫の健康保険は健康保険組合で、しかもその健康保険組合は「会社合併のために解散」しているというケースがありました。新たに設立した健康保険組合に電話してみたのですが、「古い書類は保存期間を過ぎ全部廃棄してしまったので、証明などできない」というものでした。健康保険組合だけでなく事業主も無理だと、協力してもらえませんでした。
また、別の女性は、50歳のころに公務員をお辞めになり、その後共済の短期給付(民間でいう会社での健康保険)の、任意継続をされていたため、証明書が取れないということがありました。
前者の方は、他にも手を尽くしたのですが途中であきらめられ、後者の方は、当時「健康保険については負担割合2割(被保険者、任意継続を含む)、と3割(被扶養者)の違いがあるため、すぐに健康保険の扶養になるとは限らないケースが普通である」という主張が認められ、証明書類も特段必要なく遡及して第3号の被保険者期間となりました(この辺りは年金事務所により判断が分かれます)。個別対応で明確な基準がないので、健康保険での扶養が確認できない場合に手続きするのは大変です。
カラ期間の証明は簡単
昭和61年3月までの、サラリーマンの妻の期間=カラ期間は年金額に結びつかないので、魅力には乏しい期間ですが、手続上はそれを使うのはとても楽なのです。今の第3号のように、「扶養の証明」の問題がでてきません。
戸籍等で、当時夫婦であったことを証明すれば十分、手続の際に戸籍を添付して、昭和61年3月前に結婚している期間があることを申し出ればよいのです。あとは年金事務所で、その期間について夫が厚生年金に加入していたか確認する。それでおしまいです。扶養ということが条件にはなりませんので確実です。
保険料の納付・免除期間が25年に達しない人でも、このカラ期間があると判断できた場合は年金を受け取れるのは間違いないですから、微妙な場合でも自信をもって相談の場で「あなたは年金貰えます」と言うことができるのです。しかし、第3号特例届出の場合、扶養の証明が絡むのですぐには断言できません。扶養ということで右往左往。年金はやはり難しいです。
2010.11.15
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執筆者:桶谷 浩
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[経歴・バックグラウンド]
大学卒業後、生命保険会社に勤務その後退職し、学習塾等に勤務
2001年社会保険労務士として独立開業
2002年FP登録(AFP、後CFPに)
現在、公的年金を中心に据え、成年後見・介護制度を併せて、広く老後の生活設計を考えるというテーマで、相談業務、講演、執筆など活動中。
2007年4月に合同会社電脳年金を立ち上げ。
[保有資格]
社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(CFP)、行政書士
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