第105回 企業年金の特徴と公的年金との関係
企業年金にはいろいろな種類がある
「企業年金」と呼ばれるものにはいろいろな種類があります。「厚生年金基金」「確定拠出年金」「確定給付企業年金」、2012年3月で廃止されますが「税制適格退職年金」、あとは退職金の積立なのですが、「中小企業退職金共済(中退共)」も分割の形(年金に近い形)で退職金を受け取ることができるので、ときどき企業年金の中に入れて説明されることがあります。
従業員の関心は薄い
さてそんな企業年金ですが、中身はそれぞれ異なります。
個々の詳細な内容については会社からの説明書類、チラシやパンフレット、インターネット検索その他で確認いただくとして、企業年金を受給する側の人間にとってなによりも関心があるポイントは、企業年金が「いつからもらえるか」「いくらもらえるか」「いつまでもらえるか」です。
この3点は、老後の生活設計を考える上で非常に重要なポイントとなります。
老後の不安はとても大きいのに、この点がきちんと把握されておらず、老後の生活設計をうまく描けていない方も少なくないようです。企業年金は、企業に就職したら自動的に加入するのが基本ですから当初から企業年金自体への関心も薄く、場合によっては60歳近くになってもいまだに「何が何だかよくわからない」ということも普通にあるのです。
しかしきちんと把握しておかないと…
まず、「厚生年金基金」についいてですが、これは「終身年金」です。インフレ対応はしていませんが、終身ですから一生にわたって年金を受給できます。ですから老後の生活費としてはもっとも計算ができるものです。上記の関心ポイントの「いつまでもらえるか」は考えなくても済みます。
つい最近までは、「企業年金といえば厚生年金基金」というくらい数も大変多く、厚生年金基金は厚生年金と似たような形での受給ができた(国の年金を取り込む=代行部分の存在)ので、ほぼ厚生年金と同じ目線で老後生活設計ができました。
ところが、その他の企業年金については、制度設計がかなり自由に企業に任されているので、その点がバラバラであいまいです。そこを早くからきちんと認識しておかないと、個人の老後設計がなかなか立ちません。
企業年金が有期(5年、10年、15年、20年)である場合は、その企業年金の額にもより大きさは違いますが、年金が終了する年齢で必ず収入がガタンと減る「段差年齢」ができます。
つまり、60歳から企業年金が10年支給される場合は70歳で支給終了。70歳までのある程度余裕のある生活から、急に収入が不足気味になることになります。その対策を早いうちから十分に考えておかないといけません。「収入が減ることはわかっていたが、いざ減ってみると思ったよりも生活が厳しく大変だ」となることは避けたいものです。
具体的にいつからいつまでもらえるか
「民間における企業年金・退職一時金の支給状況の概要」(平成18年 人事院)という資料が公表されています。
その中に、企業年金別に「何歳から支給されるか」「何年間支給されるか」という統計資料があります。
その資料を読むと、「確定拠出年金」「確定給付企業年金」については、「60歳から支給、かつ有期年金」というのが最も多い類型であることがわかります。「中小企業退職金共済」についてはこの中に資料としては取り上げられていませんが、終身年金はあり得ませんから、こちらは100%有期年金です。
また有期の場合の支給期間ですが、「確定拠出年金」も「確定給付企業年金」も10年支給が最も多く、ついで20年ですが、その差はあまり多くありません(確定拠出年金で有期年金の45.5%が10年、41.6%が20年、確定給付年金で、有期年金の35.9%が10年、30.2%が20年)。
企業年金を一時金として選択する場合は、基本的に退職金を貰うのと何ら変わりません。
しかし、企業年金をその名のとおり「年金として受給する」場合は、老後生活への備えという働きを期待していることが十分あろうかと思います。
60歳から貰うとして、10年経過後は70歳。まだまだ老後は続きます。同様に20年であれば80歳。男性であればほぼ平均寿命に差し掛かる年齢ですが、残された妻の生活は続きます。
今までの企業年金の中心が、終身であった厚生年金基金から、確定拠出年金、確定給付型企業年金の有期年金に代わることにより、老後設計に関する準備の仕方が変わってくることも考えられます。それに対する関心や準備といった意識は、一般の方にはかなり不足しているようですので、専門家による老後生活設計のご提案の重要性がますます増加しています。
2011.02.07
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執筆者:桶谷 浩
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[経歴・バックグラウンド]
大学卒業後、生命保険会社に勤務その後退職し、学習塾等に勤務
2001年社会保険労務士として独立開業
2002年FP登録(AFP、後CFPに)
現在、公的年金を中心に据え、成年後見・介護制度を併せて、広く老後の生活設計を考えるというテーマで、相談業務、講演、執筆など活動中。
2007年4月に合同会社電脳年金を立ち上げ。
[保有資格]
社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(CFP)、行政書士
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