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知ってビックリ!年金のはなし
第115回 難しい年齢差のある夫婦のご相談
 
配偶者との年齢差が20歳!?
  時々、国際結婚をされている方のご相談を受けることがありますが、国際結婚をされている方は、日本人同士の結婚と少し違った傾向があるように感じます。それは夫婦の年齢差です。
  最近年金相談にいらしたあるご夫婦も、夫が60歳近くで妻は40歳前後。子供はまだ小さくて10歳でした。その方だけでなく、同じように国際結婚をされていて年齢差のある方の割合が、日本人のご夫婦の場合に比べて多く感じるのです(統計を取ったわけではありませんが)。もちろん日本人のご夫婦で年が離れている方もいらっしゃいますので、外国の方特有のものと決めつけることができるわけではありませんが。
公的年金は外国人といえども定住者に関しては日本人と同じ取り扱いをしますから、外国人だからといって差別的に取り扱われることは全くありません。
年齢差が大きいと気を使う
  老後の年金を受け取るにあたり、「加給年金」「振替加算」という非常にわかりにくい仕組みがあります。ちょっと復習してみましょう。
  夫が長い間(原則として20年以上)会社勤めをして厚生年金に加入している場合に、夫が一定の年齢(定額部分または老齢基礎年金を受け取ることのできる年齢)から妻が65歳になるまでの間、年間394,500円の年金を受け取ることができる、これが加給年金でした。これはずっと受けられるわけではなく、妻が65歳になったら終了し振替加算に代わります。
  この加給年金は妻だけが対象なのではありません。子(18歳に達する年度末まで=すなわち現役で高校に入った場合の高校卒業まで)がいる場合は、妻の加算に加えてその子も加給の対象になります(特別加算はないので妻の加給額よりは少ないですが)。
  一般的なご夫婦の相談なら
  「お子さまは……あ、もう就職されているんですね」
  と一瞬のうちに話が終わるのですが、夫婦の年齢が離れている場合、
  「お子さまがお二人で、上のお子さまが高校を卒業されたら金額が減り…」と丁寧に説明をしなければならなくなります。例えば65歳の時に17歳ということは、48歳の時の子供ということになります。ついつい話をいい加減に右から左に流してしまうと、子供の加給年金の説明を忘れてしまう危険もあります。
振替加算もつかない方なので
  また加給年金の説明では、通常妻が65歳時点で振替加算に代わるという説明をします。しかし振替加算は昭和41年4月1日生まれの方までに該当するもので、それ以降生まれの方は振替加算の対象にはなりません。
  現在、昭和41年生まれの方というと45歳くらいですが、年齢差のことなどあまり考えていないことも多く、ついいつもの流れで「加給年金は振替加算に代わりますよ」というような説明を若い奥さまにしてしまう危険性があるのです。
  つまり、非常にイレギュラーなパターンのときは、加給年金や振替加算をきちんと基礎から理解しておかないと、お客様から聞かれた時に失敗をしてしまう可能性があるのです。十分気をつけて間違えないように慎重に説明することが大切です。
なかなか理解をしてもらえない
  実は外国の方(特にアジアからいらした方)については、別に悩ましい問題があります。
  現在の国民年金は、制度自体への不信感が強いこともあり納付率が下がっていますが、外国から日本にいらした方々も保険料未納である方が多いようなのです。
  ご主人へのお手続きの際に、奥様の年金のことをさりげなく聞くのですが、
  「私は保険料を納付した方がいいと思っているのですが、妻は入らなくてもいいと言っていますので納付していないです」
  という方がいらっしゃいました。
  夫がサラリーマンで第3号被保険者ならば、個人の負担はないので問題なく被保険者となるのですが、自営業者の場合は保険料を支払っていない人もかなり多いようです。日本人でさえ「将来年金は大丈夫か」と思っている昨今、外国の方にはさらに「掛けたお金が無駄になるのではないか」という心配があるのでしょう。
  それに加え、もともと住んでいらした国では年金制度自体がないか、あるいはあってもまだきちんと整備されてない国も多く、年金に対する認識が薄いということも未納理由の一つとして考えられます。
  年金は、ケガや病気をした場合の障害年金という仕組みもあるので、決して老後だけに関係するものではありません。そのことを口酸っぱく説明しているのですが、さて理解してもらえているのでしょうか……。
2011.07.11
執筆者:桶谷 浩
[経歴・バックグラウンド]
大学卒業後、生命保険会社に勤務その後退職し、学習塾等に勤務
2001年社会保険労務士として独立開業
2002年FP登録(AFP、後CFPに)
現在、公的年金を中心に据え、成年後見・介護制度を併せて、広く老後の生活設計を考えるというテーマで、相談業務、講演、執筆など活動中。

2007年4月に合同会社電脳年金を立ち上げ。
[保有資格]
社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(CFP)、行政書士
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