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知ってビックリ!年金のはなし
第119回 なんでこんな面倒な手続きを
 
以前公務員だった方がお見えになりました
  もうすぐ60歳になられる女性の方が、国(年金機構)からの年金請求書(緑の封筒に入っている事前送付方式の年金請求書)をお持ちになって年金相談にいらっしゃいました。
  さらにこの方は地方都市で公務員をされていた期間が10年ほどあったということで、共済組合の年金請求書も同時にお持ちになられました。
  目の前で、両方の書類をお出しになられます。
  当然ですが、送られてきた封筒には色々な書類や説明書が入っていますが、共済組合の書類の中に「年金加入期間確認請求書」という用紙が入っていました。
  そういえば、この年金加入期間確認書のことで、以前別のお客様に延々と説明をしても、なかなか理解していただけず苦労したことがありました。
  ふとそれを思い出したのですが、どうもこの「年金加入期間確認通知書」は、共済組合(特に若い頃に短期間共済組合等で働かれ中途退職された場合)と厚生年金の両方の加入期間のある方の手続きの場合、とてもわかりにくく厄介なもののようです。
そのまま出してしまうとだめです
  年金請求を周囲のアドバイスを全く受けずにする場合でも、同封されている説明書(日本年金機構からのものにも共済組合からのものにも入っています)をあまり読まないか、読んだとしても年金のことであまりよくわからないのか途中で止めてしまう方が多いです。
  確かにこれは、年金という仕組みが難しすぎることもあり、仕方がないことかもしれません。
  私も年金の素人だったら途中で投げ出していたかもしれません。
  よくわからない内容をあれこれ考えるより、手間はかかりますが、とりあえず送れば間違っていたら連絡がくるだろう、と出してみるのも一つの考え方です。
  その方もやはりあまり内容をお読みになっていらっしゃらなかったようでした。
  「共済組合の手続きにはこれとこれを出せばいいのね?」と確認を求められたのですが、案の定、年金加入期間確認通知の部分が間違っていました。
  もしこのまま直接共済組合へ送付していたら添付書類不備になっていたと思います。
期間確認請求書は請求手続きの書類ではない
  厚生年金と共済組合に加入していた期間のある方が、国(年金機構)に年金請求をするには、「私は○年○月○日から○年○月○日まで共済組合に確かに加入していました」という共済の確認書面を添付しないといけません。
  逆に共済組合への請求には、「私は○年○月○日から○年○月○日まで厚生年金(国民年金)に加入していました」という国(年金機構)の確認書面を添付しないといけません。
  なぜそんなややこしいことをするかといえば、年金制度は「厚生年金は国で」「共済組合では共済組合」と、それぞれ別の管理がなされ、一元化がされていないからなのです。
  請求手続きの際、お互いがお互いの期間を証明することによって初めて請求者の履歴が完ぺきに明らかになります。
  たとえば厚生年金に15年、共済年金に15年の加入期間のある方は、合計で30年の加入期間があり十分年金が貰えるのですが、国(日本年金機構)は厚生年金期間だけの15年、共済年金は共済組合の期間だけの15年しか把握できません。
  そうすると、本当に老後の年金が貰える(納付等が25年ある人)かどうかということさえも国(日本年金機構)または共済組合単独ではわからないだろう、そういう論理構成なのです。
  この女性の共済組合からの請求書に同封されていた「加入期間確認請求書」は、丁寧に補足すると、「(国に)厚生年金等の請求手続きをする時、(共済組合に)加入していた期間の確認書面が必要ですから、その発行を(共済組合に)お願いします」という請求書です。
  昔属していた共済組合に10年間の証明を、国(日本年金機構)の年金請求時に添付書類としてつける書面を貰うための用紙であって、決して共済組合の年金手続き自体に使う用紙ではなかったのです。
早く解決を
  ところが、送られてきた「共済年金の請求に必要な一連の書類」の中にさりげなく期間確認請求書が入っている。
  しかも、どうもそのような書類を出してくださいと書いてある。
  そうなると頭が混乱し始めます。
  よく説明書を読まない場合は当然として、複雑な年金制度のしくみがよく判らない場合は、期間確認請求書に住所と氏名を書いてただ送り返すだけで「年金事務所で共済年金を手続きするため、国民年金や厚生年金の加入期間を確認してもらった書面」の添付を忘れてしまいます。
  厚生年金期間のある公務員の方でも、在職中に60歳を迎えられる場合は痒い所に手が届くように共済組合の担当者がいろいろとアドバイスをされているようでスムーズですが、共済組合の中途退職者の場合は手続き書類がポンと送られてくるだけなので、間違えてしまいます。
  細かなことですが共済年金は本当に難しく多くの人が混乱し苦労されています。
  何とかしてほしいものですが、結局、早く年金の一元化(特に手続きの一元化は先行して)を進めないと本質的解決にはならないようです。
2011.09.20
執筆者:桶谷 浩
[経歴・バックグラウンド]
大学卒業後、生命保険会社に勤務その後退職し、学習塾等に勤務
2001年社会保険労務士として独立開業
2002年FP登録(AFP、後CFPに)
現在、公的年金を中心に据え、成年後見・介護制度を併せて、広く老後の生活設計を考えるというテーマで、相談業務、講演、執筆など活動中。

2007年4月に合同会社電脳年金を立ち上げ。
[保有資格]
社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(CFP)、行政書士
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