第126回 振替加算ちゃんと付いていますか?
夫が公務員の方の振替加算
夫が民間の会社員(厚生年金)や公務員(共済年金)の場合、夫が一定年齢になったら「加給年金」という割増の年金が支給開始され、妻が65歳になった時点でそれはなくなり、別途妻に振替加算という年金が支給されます(例外もあります)。民間の会社員であっても公務員であっても仕組み上違いはないのですが、事務手続きの流れは少し異なります。
それに気付いたのは、じつは夫が公務員である奥様から、「私が65歳になったのに、以前説明されていた振替加算がつくはずなのについていない。どうなっているのでしょう?」という問い合わせが先月から立て続けに何件もあったからです。
原因は連携の悪さ
さっそく、私がいつも教えていただいている、ご主人が公務員の方で現在65歳になられた社労士の方にお聞きしました。
結論は、「共済組合」と「国(年金機構)」との事務の連携の悪さが原因で支給開始が遅れるのだそうです。
夫が厚生年金+国民年金、妻も厚生年金+国民年金であれば、その年金を管理しているのはひとつ(国(年金機構))だけです。ですから妻が65歳になり、配偶者である夫がその時点で「加給年金を受ける権利」を失い、かつ妻が「振替加算を受ける権利」が開始するという流れ全部が年金機構の記録でわかります。
ところが、夫が公務員(共済組合の組合員)である場合は、夫に対する加給年金は共済組合から支給され、夫の加給年金が終わった後の妻への振替加算の支給事務は年金機構が担当するということで、お金の支払元が違っているのです。あくまで共済組合に加入していたのは夫であって妻は共済組合とは全く関係ありません。夫がいくら共済組合に長くいたとしても、妻への振替加算の支給は共済組合からではなく国からされることはおわかりですね。
支払元が違うのであれば必要な受給権者の情報の受け渡しは必要で、加給年金担当の共済組合から振替加算担当の国(年金機構)へデータを移すわけですが、それがスムーズに行われていないわけです、手続きをさぼっているわけではなく遅いだけなので、現時点では、数ヶ月から半年した後に振替加算は支給されるようになり、かつ(支払いが遅れることで)溜まっていた「振替加算額もその時にまとめて支払われますからご安心ください」と、共済組合から説明があったとのことです。しかし、夫が公務員、妻が専業主婦などという家庭はどこでも普通にあるのに、困ったものです。たくさん問い合わせがあるでしょうが、そのたびに「ご安心ください」というような説明を行っているのでしょうか。
きちんと確認しましょう
さて、このように「自分には加給年金がつかないといけないのについていない、おかしい」と考え、問い合わせをされる方はかなり年金に関心のある方ですから問題は大きくなりません。
問題なのは関心のとても薄い方です。実際には、厚生年金(夫が民間の会社員であった)の場合でも妻が振替加算を受け取っていない方がぽちぽちといらっしゃるという話です(当然ですが統計はありません)。まして冒頭の例のように、夫が共済組合の場合ですとその割合はもっと多いことでしょう。これでも共済組合と国の事務連携は随分改善されたほうで、以前は全くボロボロな状態でした。
振替加算の額は、現在の金額で月額に直すと2万円から数千円、本当に注意してみないと、微妙な額のため発見が遅れがちになります。全く年金が支払われていないのと違って額が少ないと発見しづらいのです。
夫が20年以上会社に勤め(以前は40歳以上15年〜19年という特例がありましたがそれも含め)、かつご自身が20年に満たない期間しか勤めていなかった女性は、念のため一度は「自分に加給年金が付いているか否か」を確認してみてはいかがでしょうか。特に夫が共済組合の方は、手続きをされた時期が古ければ古いほど必要です。
直接年金事務所に行かれてもよいですし、支給額変更通知の配偶者の加給区分に1がついているかどうか等、専門家が資料を見ればすぐに振替加算が付いているかどうかわかるものです。一度知り合いの社労士等に資料を持参して聞いてみるのもよいでしょう。
しかし共済組合と厚生年金の一元化、なんとかならないものでしょうか。組織の統一はゆっくりでもいいですが「手続き(特に受給者)の統一」は緊急の問題だと思うのですが。
2011.12.19
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執筆者:桶谷 浩
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[経歴・バックグラウンド]
大学卒業後、生命保険会社に勤務その後退職し、学習塾等に勤務
2001年社会保険労務士として独立開業
2002年FP登録(AFP、後CFPに)
現在、公的年金を中心に据え、成年後見・介護制度を併せて、広く老後の生活設計を考えるというテーマで、相談業務、講演、執筆など活動中。
2007年4月に合同会社電脳年金を立ち上げ。
[保有資格]
社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(CFP)、行政書士
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