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知ってビックリ!年金のはなし
第15回 公務員の年金(共済)と厚生年金
 
現業公務員の給与水準が話題に
 最近の新聞の話題です。「現業公務員の給与水準が、民間の同種の仕事に比べてずいぶん高い」という総務省の調査結果が出たとの記事です。バスの運転手で49.4万円(民間は31.6万円、公務員は民間の1.55倍の給与水準)、その他にも清掃職員が1.4倍、学校給食職員が1.35倍だそうです。
年金の仕組み上は、確かに有利な公務員の年金
 「公務員の年金(=共済年金)の支給水準は民間と比べて優遇されているって聞くけど、実際どうなの?」と聞かれることがあります。あれこれと有利な点はありますが、一番関心の高い年金額についても有利なのは明らかです。共済年金の場合、報酬比例の年金額の計算式は厚生年金と同じですが、職域加算(俗に3階建てに相当する部分)が存在しているためです。その額は報酬比例の年金額の20%(20年以上勤務の場合)で、この部分によって厚生年金(報酬比例部分)の2割増しになるのです。

 職域加算があることと、その額が妥当なのかについては意見の分かれるところです。民間企業は厚生年金基金のような上乗せ制度があるため、公務員もそれに相当する分の上積みがあるのは当然だという考え方があります。また公務員は特に地方都市では、非常に人気の高い職業ですから、優秀な人が学校を卒業して難しい採用試験を受けて採用され、なおかつ公共の福祉のために長年がんばったご褒美と考えれば、年金についてもある程度優遇されてもおかしくないと考えることもできます。
 反対に、大企業は公的年金の上積みをするのが一般的ですが、「大半の一般の会社は厚生年金だけに入っているのが普通であり、公務員は公僕という立場上一般的な人とあまり差をつけるべきではないからおかしい」と考える人もいます。どちらが正しいのかはわかりませんが、厚生年金より優遇されていることは事実です。
年金額を比較してみましょう
 2割増しというのは、厚生年金(報酬比例部分)の話です。しかし、老後に貰う年金は国民年金(または共済、厚生年金の定額部分=所得に関係ない)と厚生(共済)年金(報酬比例部分)の合計となります。
 具体的な数字で考えてみましょう。冒頭の賃金格差を基準にすると、民間のバス会社の平均的な運転手さんが年金を月々16万円(厚生年金9.4万円、国民年金6.6万円)貰うとき、公営のバス運転手さんは23.6万円(共済年金17.5万円(9.4万円の1.55(給与格差)×1.2(年金格差))+国民年金6.6万円)を貰う計算になります。年金受取総額比較では、共済の方が47.5%多くなります。
 もしここで、給与水準が全く一緒だと仮定すると、民間のバス運転手さんが年金を16万円(厚生年金9.4万円、国民年金6.6万円)貰う場合、公営のバス運転手さんは17.9万円(厚生年金11.3万円(9.4万円の1.2倍)、国民年金6.6万円)の年金となります。この場合は民間に比べて12%増だけです。確かに高いですが、大騒ぎするほど「極端に差がある」という感じではありません。
官民の年金額の差は、仕組みの差と給与水準の差
 公務員の年金額が高くなる原因は、年金制度自体に加え、民間より給与水準の高い、つまり年金計算の元となる給与の官民格差が反映しているからだと言われていたのですが、このことはやはり正しかったようです。総務省の実態調査の新聞記事はそれを実証する1つの資料として大変興味深く読ませていただきました。
 共済年金制度への意見や批判は沢山ありますが、制度の問題だけではなく、給与から発生する問題も混じっていたりしています。共済年金の将来を考える場合、我々はそこにも気をつけないと正確な論議ができないのです。
2007.04.23
執筆者:桶谷 浩
[経歴・バックグラウンド]
大学卒業後、生命保険会社に勤務その後退職し、学習塾等に勤務
2001年社会保険労務士として独立開業
2002年FP登録(AFP、後CFPに)
現在、公的年金を中心に据え、成年後見・介護制度を併せて、広く老後の生活設計を考えるというテーマで、相談業務、講演、執筆など活動中。

2007年4月に合同会社電脳年金を立ち上げ。
[保有資格]
社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(CFP)、行政書士
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