第19回 年金記録漏れの問題への対応
世の中大混乱状態です
年金記録漏れの問題ですが、マスコミで取り上げられ始めてから、社会保険事務所は普段の何倍ものお客様であふれ半日待ちは普通の状態。金融機関の年金相談会は飛び込み客で大盛況ですが、お客様の年金履歴などを聞くことのできる年金ダイヤル(社会保険庁の電話による年金相談サービス)が通じにくいため、普段のように年金相談の場で情報収集ができず「痒いところに手が届く」アドバイスができない状態です。
本当に困ったものです。全然仕事がスムーズに流れていきません。
加入記録のずさんな管理については、件数など詳細は知りませんでしたが、これまでも年金相談の現場で普通に起こっていたほどよくある話なので、「総計では膨大な数だろうな」と、年金を扱う人間なら誰もが思っていたことです。そしてそれをなるべく受給できるように誘導することが現場での大切な業務でした。だから今回大騒ぎになっても仕事は何も変わりません。
お客様に聞かれたら
さて皆さん、お客様に「私の年金大丈夫かしら?」と質問されたら、どう答えていますか?
私は最近、その答えの前に、急ぐ必要の無い方には「冷静になって暫く待つ事」を強くお勧めしています。「大丈夫か大丈夫じゃないかは、社会保険事務所(庁)に聞いてみないとわからない。でも、その作業が、社会保険事務所(庁)が大混雑で大変なわけですから答えようが無い」ということだからです。
しかも窓口混雑や電話も全く繋がらない緊急事態を解決すべく、社会保険事務所の窓口や電話相談担当も大量臨時増員というような話がマスコミ報道されていますが、そんな緊急増員されたスタッフで果たして十分な対応ができるのでしょうか? 普段から「年金は本当に難しい」と感じている身ですので、ものすごく不安を感じてしまいます。
急ぐ人、急がない人
上でちょっと触れましたが、この問題、結論を急ぐ必要のある人と無い人がいます。急ぐ必要のある人は「すでに年金を受給中の人、年金をもうすぐ受給する予定の人」です。現に年金を受けている(あるいは受ける予定のある人)ですから、結論によっては貰える年金額が違ってきますので緊急の対応が求められます。こういう人たちに、暫く待てというアドバイスはできません。
逆に急がないのは、まだ年金受給に時間がある人です。しかし、最近はこちらに属する人の問い合わせの方が多いのが現実です。
どこの社会保険事務所にいっても長時間待ちですから「無理に今行かなくても、すこし世の中が落ち着くまで(いつ頃落ち着くかはわかりませんが、少なくても今の状態がずっと続くとは思えません)待ってから相談に出向くほうが、質の高い相談が受けられる可能性が高いと思いますよ」というご案内を私はしています。
特に年金記録が漏れていた場合の5年の時効以上に遡る範囲はどこまでというような話は、この文を書いている現在では、まだはっきりと取り扱いが決まっていないのですから、現時点では確かなアドバイスもできませんし、こちらとしても後送りしてもらったほうがより正確なご案内ができるのです。
記録の通知は進みつつあります
「今、行かなきゃ忘れるだろう?」とおっしゃる人もいますが大丈夫です。現在は58歳時点で皆さんに、加入記録が送付されます。今年から35歳の人、45歳の人にも年金の加入記録の送付が開始されます(35歳の人にはすでに開始されています)。
だから、チャンスは必ず来きます。「忘れていても嫌でも思い出す」そういう仕組みになっています。安心して忘れてくださいとはいいませんが、そういう仕組みがあるということを知るだけでも、ずいぶんと安心できるはずです。要は貰うまでに記録を整備すればよいのです。
とにかく、あわてない、周囲に惑わされない。これが今必要な事だと思います。
2007.06.19
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執筆者:桶谷 浩
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[経歴・バックグラウンド]
大学卒業後、生命保険会社に勤務その後退職し、学習塾等に勤務
2001年社会保険労務士として独立開業
2002年FP登録(AFP、後CFPに)
現在、公的年金を中心に据え、成年後見・介護制度を併せて、広く老後の生活設計を考えるというテーマで、相談業務、講演、執筆など活動中。
2007年4月に合同会社電脳年金を立ち上げ。
[保有資格]
社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(CFP)、行政書士
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