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知ってビックリ!年金のはなし
第20回 生命保険のセールスをする人だから気づく年金の貰い忘れ
 
セールスをしているからこそわかる貰い忘れ
 年金納付記録の不備は、貰い忘れの年金に結びつきます。前回はきわめて単純な貰い忘れという話でしたが、今回は、生命保険を扱っているがゆえに発見できる貰い忘れというものがある、そんなお話です。

 障害年金における“障害状態”というのは外見ではわかりません。もちろん歩けない状態とか目が見えない状態とか、ひと目でわかる場合は別です。しかし、体の内部の疾患による障害はまずわかりません。
 公的年金の相談を受けたとしても、そのような疾患がある場合にはご本人から障害の話をしていただかないと障害年金のアドバイスはできないのです。
病気が重いから生命保険に入れないということを裏読みすると
 生命保険に加入をお勧めしても、「いや私は肝臓が悪いから」とか、「心臓が悪いから保険に入れない」とかお客様がおっしゃることがあります。それが保険加入を断る単なる口実の場合も多いのですが、加入の見込みが無いからと単にその場で話を終わるわけではなく、「では障害年金を受給されていますか?」というような声かけを最後にしていただくのがとても有用です。

 割増保険料を払っても生命保険に入れないほど重い既往症がありながら、なぜか障害年金を貰っていないという場合もあり得ます。生命保険と公的年金は、その障害に関する視点が違いますから、保険契約が結べないからといって障害年金が受給できるわけではありません。しかし、年金の貰い忘れ防止は「疑うこと」から始まります。

 プライバシーに属する健康状態をお客様に聞くことのできる仕事はそうたくさんありません。また聞いた情報を安易に他に漏らす事も良くありませんから、結局、その場でアドバイスできるのはセールスの人しかいないのです。

 重い障害をわずらっている人であれば「こういう制度(障害年金)もありますが、ご存知ですか? 念のため社会保険事務所に相談されたり、金融機関の年金相談会にいかれたらどうでしょう」と声をかけてみてはいかがでしょうか。場合によっては、ものすごくその方を助ける事になります。

 障害年金は額が大きく、かつ貰い忘れが判明して受給権が発生すると、それこそ数百万円の遡及支給があったりします。しかも、障害年金は公的年金の中で一番難しいとされているものです。
 障害の程度が軽いと年金は出ませんし、仮に障害が重くても保険料の納付状況によっては、支給されなかったりもします。また、障害の程度は医師にしか判断ができませんし、年金の加入状況は社会保険事務所に聞いてみないとわかりません。ですから、あまり深入りするのは危険ですが、まず「障害状態になった場合にも年金がでる場合がある」ことを知らせるだけでも十分に価値があります(そこすらわかっていない人が結構多いのです)。
お願いになりますが
 今マスコミで話題になっている年金問題(年金加入記録のずさん管理)とは対象数が圧倒的に違いますが、「障害年金を貰えるのに貰っていない」というタイプの貰い忘れは現実に存在し、かつ、こういう方々は「最も援助を必要とされる人」なのです。

 営業成績に直結せず、ひと手間余計にかかる事ですが、「本当は年金を貰えるのに、何もせずに困っている人がいる」という現実があることを理解され、一言アドバイスをしていただけたら大変嬉しいことです。
2007.06.19
執筆者:桶谷 浩
[経歴・バックグラウンド]
大学卒業後、生命保険会社に勤務その後退職し、学習塾等に勤務
2001年社会保険労務士として独立開業
2002年FP登録(AFP、後CFPに)
現在、公的年金を中心に据え、成年後見・介護制度を併せて、広く老後の生活設計を考えるというテーマで、相談業務、講演、執筆など活動中。

2007年4月に合同会社電脳年金を立ち上げ。
[保有資格]
社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(CFP)、行政書士
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