第22回 58歳時点で送られてくる年金の加入記録すら保存していない
年金に無関心な層も存在する
年金相談会に行くと、いろいろなお客様に会うことができます。
最近は58歳時点で年金の記録が送付され、またそれに付随して希望者には見込み額を教えてくれるというサービスが始まっているため、この記録や見込み額を持参して相談に来る方が多いです。
ところが、「そんなものが来たかなあ」とか「そういえばそんなものが来たような気がするけれど、どこかいっちゃったよ」
そういう人が結構いらっしゃるんですね。そして、そういう人たちは決して少なくない。
しかも年金相談会に来るということですから、少しは年金に関心のある層、かつ、もうすぐ年金を貰える年齢なわけですが、それでもこの程度の関心しかないのです。
今回の社会保険庁の不祥事で、怒りを爆発させている方がいる反面、現実には関心なく流されている方もいるのです。
信じられないくらいに、無関心
私がまだ駆け出しの頃、受給手続きをさせていただいた方で、前述の無関心状態に近い方がいました。
手続きを任せていただいたのはよいのですが、その手続書類を社会保険事務所にもっていったところ、担当の女性が親切な方で、「この方、他にも加入されていた期間があるようなのですけれど、どうですか?」と聞かれました。名前と生年月日でコンピュータ検索をかけ、過去の履歴で統合されてない怪しい記録があったらしいのです。
(社会保険事務所の担当者個人レベルでは、最近のような問題が生じる前から、手続きの段階で、一応そういう漏れが無いかを自発的に検索してくれたりしていました。)
そんな話は一切聞いていなかったので、すぐにそれをお客様に説明したら、「そんな昔の事はわからないよ、うん、もういいよ」と一言いわれて終わりでした。
今思い返せば自分の未熟さに恥じ入るばかりです。お金が絡むことですからもっとしつこく聞き出せばよかったのですが、当時はそこで終わってしまいました。
無関心層が、実は最も専門家の助言を必要とする
年金は全ての国民が加入するものですから、関心のある層だけではなく、全く関心の無い層や、少しは関心があるもののあまり積極的ではない層の人たちへのケアが、今後は特に必要になってきます。
そういう人たちは、今回の不祥事に対する対策のように、臨時で「社会保険庁から記録の確認等の通知」が来ても、やはり書類を放置されてしまう可能性は少なくありません。
これは大変に危険なことです。記録の訂正には、どうしても国民の側からの反応(返事)が必要になり、勝手に記録訂正をするわけにはいかないためです。
こういった事情から、記録の訂正はすぐに完了するのではなく、これから5年、10年、15年というきわめて息の長い作業になるでしょう。
無関心層が多いとされる若い世代であっても、今訂正をやってしまえば後は安心なのですが、今回の騒ぎの中にいながら何もされない方がやはり出ると私は予想しています。また、高齢で年金を受給中だけれど、今回の話題の推移がよくわからない方もいらっしゃいます。
皆さんも、今後でお客様にお会いしたら、それとなく年金について聞いてあげてみてください。無関心層にこそ専門家のアドバイス(簡単なもので結構です)が必要なのですから。
2007.07.23
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執筆者:桶谷 浩
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[経歴・バックグラウンド]
大学卒業後、生命保険会社に勤務その後退職し、学習塾等に勤務
2001年社会保険労務士として独立開業
2002年FP登録(AFP、後CFPに)
現在、公的年金を中心に据え、成年後見・介護制度を併せて、広く老後の生活設計を考えるというテーマで、相談業務、講演、執筆など活動中。
2007年4月に合同会社電脳年金を立ち上げ。
[保有資格]
社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(CFP)、行政書士
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