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知ってビックリ!年金のはなし
第25回 厚生年金基金、支給漏れで大混乱
 
やはり厚生年金基金はわかりにくい
 9月に新聞報道を発端として厚生年金基金の1544億円の貰い忘れの問題が騒がれ始め、厚生年金基金の総元締めである「企業年金連合会」に電話が繋がりにくい状態が一時期続きました。最近は電話の繋がりにくさもすこし改善されてきていますが。

 厚生年金基金の話は第18回でも触れましたが、また世の中の話題になっているので、もう一度書いてみたいと思います。

 やっと、社会保険庁から来る58歳の加入履歴に「厚生年金基金に入っている期間」が表示(その後来る年金の見込額には基金の額は表示されない点は注意してください)されるようになったので、厚生年金の加入期間の中で厚生年金基金の貰い忘れ(手続漏れ)は減少しつつあります。しかしそれでも、「厚生年金基金制度」自体の知名度が低く、年金相談会でも「厚生年金基金って一体何ですか?」と質問をされることがとても多い上に、加入されていても短期の加入で「年金額が極端に少ない」人が多いために、貰い忘れをなくすことは、とても大変な作業になります。
厚生年金は企業年金なのですが
 厚生年金基金は一般に企業年金といわれます。この件について現厚生労働大臣はしばらく前に、この厚生年金基金の支給漏れが問題になった際、「企業年金まで国が面倒見ていたらやっていけない。企業(あるいは企業年金連合会)がしっかりしなければダメだ」という旨の発言をされました。一見その理論に間違いは無さそうに思えるのですが、厚生労働大臣のおっしゃるように、本当に国は全く関知しないものなのでしょうか?

 厚生年金基金がどんなものかを復習すると、「本来なら国が支給するべき老齢厚生年金を、基金が代わって支給する。その場合に、代わって支給される年金に独自のプラスアルファの部分をつけて加入者に支払う制度」です(プラスアルファをつけないと、支給額が国の運営する国民年金と全く同じなため、厚生年金基金を運営する意味がありません)。

 つまり、「本来なら厚生年金として支給すべき部分」がしっかりと厚生年金基金の中に入っているのです。そうすると、大臣のおっしゃるように、「国は一切関知しません」と簡単に断言できるものではない気がします。この辺はまことに微妙なところなのですが。

 実際に、今までは「貰い忘れに気がつく」のは、社会保険事務所に相談に行って、「厚生年金期間がある」ということがわかった場合が多かったわけですし(疑問に思った場合は社会保険事務所に行くと、基金の手続き方法や金額は教えてくれませんが、基金に入っていたか否かは教えてくれます。このあたりは第18回でも軽く触れました)、社会保険庁からの通知(58歳時の履歴)で、厚生年金基金に加入したときの会社と年数がわかるということは、すなわち国(社会保険庁)がその加入状況を把握している事に他なりません。これで国は全く関知しないといえるのか?

 しかも、厚生年金基金の部分は、本人が死亡し妻が遺族厚生年金を受け取るようになったら、基金ではなく普通の厚生年金という形で支給されることになる。夫が生前に厚生年金基金から老齢の年金を貰っていた場合でも、夫が死亡した後は基金からの支給はなくなり、全額が国から遺族厚生年金として支給されることになるのです。

 よく年金がわかりにくいということをお客様が言われますが、こんな不思議なことがおこるのですから無理もないでしょう。
厚生年金基金は確実に貰いましょう
 繰り返しますが、厚生年金基金は短期間の加入の場合、物価スライドをしないため、ものすごく低額なため、わかっていても面倒くさいと手続きをされない方が結構いらっしゃる。

 でもここは普段から力説しているところで、年金額がたとえ年間3千円だとしても、10年貰えば3万円になり、20年貰えば6万円になります。手続き自体はそう面倒なことではなく、普通は半日もかからないはずです。これがアルバイトなら、時給2万円! 冗談はさておいて、年金は1回の支給額ではなく累計で見て判断する。この観点は基金についても重要な事だと思います。ここは繰り返しになりますが、何回言っても言い過ぎることではないと思います。
2007.10.25
執筆者:桶谷 浩
[経歴・バックグラウンド]
大学卒業後、生命保険会社に勤務その後退職し、学習塾等に勤務
2001年社会保険労務士として独立開業
2002年FP登録(AFP、後CFPに)
現在、公的年金を中心に据え、成年後見・介護制度を併せて、広く老後の生活設計を考えるというテーマで、相談業務、講演、執筆など活動中。

2007年4月に合同会社電脳年金を立ち上げ。
[保有資格]
社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(CFP)、行政書士
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