第29回 ねんきん特別便の送付が始まります(1)
いよいよ始まるねんきん特別便
2007年春に勃発した年金騒動、当時の安倍内閣総理大臣が、「宙に浮いた年金記録の整備をきちんとします」という発言をしてから、いよいよねんきん特別便という形で順次全国民に年金記録の照会情報が送付される事になりました。
まずは、疑わしい人から送付
いま現在(2007年12月上旬)、まだねんきん特別便は送付されていませんが、今回は社会保険庁のホームページ等で知りうる情報をもとに、ねんきん特別便について触れていきます。
このねんきん特別便は、原則として国民全員に送付されるのですが、まずは記録漏れが疑わしい人から送付されます。
具体的にいうと、氏名・性別・生年月日が完全に合致していても、基礎年金番号に結びつかずに宙に浮いている記録がある可能性が高い人から送付されます。
社会保険庁からくる年金記録のお知らせ(ねんきん特別便)の右上部分にも、「※5000万件の確認中の記録の中に、あなたの記録と結びつく可能性がある記録があるため、お知らせしています」というような説明が書かれるようです。
社会保険庁HP 「ねんきん特別便」送付の流れと確認結果の記載例について
→http://www.sia.go.jp/top/kaikaku/kiroku/pdf/nenkin1-1.pdf
ただ、たとえば昭和22年〇月〇日生まれの鈴木勇さんという様などこにでもありそうな名前の宙に浮いた記録があったら、鈴木勇さん全員(全国に何人いるか知りませんが)に送付される事になるのでしょうか? そうなると「もの凄くありふれた名前」の人は、ねんきん特別便が早く来る事になるのかもしれませんね。そんな時は自分に心当りがないと悩んでしまいそうです。同姓同名同生年月日の鈴木勇さんでも、さらに詳しく精査して疑わしい人にのみ送っているのでしょうか(そこはわかりません)。
ねんきん特別便が早く来た人は、そこに記載されている年金の加入記録と、自分の過去勤めていた会社の記憶や国民年金の納付した記憶(あるいは記録)を思い起こして、遠い記憶をたどりながら、漏れがないかチェックする事になります。
結局は自分で申告しないといけない
年金記録の整備をするということを安倍前総理大臣が明言したとき、「記録が見つかったら自動的に年金の記録を訂正してもらえる」と思い込んでいた方もいるのではないでしょうか。しかし、違います。
前述のように、同姓同名同生年月日の人は日本に複数名いることはあり得る事ですし、そもそも社会保険庁が「昭和〇年〇月から昭和△年△月まで◇◇株式会社で働いていた記録はあなたの記録ではありませんか?」と問いかけたら、それが事実か否かにかかわらず結構な数の人が「はいっ」と答えるに違いありません。正直でない人を排除しないと大変な事になり、年金制度の信用、根幹にかかわる問題となってしまいます。自動的に記録を結びつけるのは現実には無理なことなのです。
そうなると、本当に記憶があいまいな人は年金に結びつかない
自分がどこで働いていたか、30年前、40年前の記憶はあいまいなことも珍しくありません。特に、転職を繰り返していたような人は、「あなたの記録と結びつく可能性のある記録がありそうです」とねんきん特別便で催促されても、思い出せないことも普通にあるでしょう。
私はこの問題について前からとても気になっていました。過去に働いていた記憶が鮮明な人は、「あれ、自分の年金記録には〇年〇月から△年△月まで◇◇株式会社で働いていた記録が載ってないぞ」ということは早くに気づいている筈です。
そういう方は、年金記録漏れの問題が大きくなる前から、社会保険事務所に調査を出したり、金融機関の年金相談会に来られたりして、既に対処済(年金を受給される年齢の方は)の方が多いのです。今回も多分まず真っ先に救済されるでしょう。でも記憶があいまいなら救済されないのです。既に認知症になって昔の事がわからなくなった方も多いでしょう。
いくら、書面を送られてきて「漏れている記録がありそうなのですが?」と催促されても思い出せないものは年金に結びつかないのです。年金の記録の整備が本人の記憶頼りというのも大きな問題ですよね。忘れていないと忘れていたで大きな差がつく、しかも30年も40年も前の話です。そんなバカなとも思いますが、今回のねんきん特別便はそういう仕組みです。
2007.12.17
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執筆者:桶谷 浩
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[経歴・バックグラウンド]
大学卒業後、生命保険会社に勤務その後退職し、学習塾等に勤務
2001年社会保険労務士として独立開業
2002年FP登録(AFP、後CFPに)
現在、公的年金を中心に据え、成年後見・介護制度を併せて、広く老後の生活設計を考えるというテーマで、相談業務、講演、執筆など活動中。
2007年4月に合同会社電脳年金を立ち上げ。
[保有資格]
社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(CFP)、行政書士
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