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第33回 厚生年金保険料と中小企業
企業がウソの報告をした場合のペナルティ
私たちの過去の給与(報酬)の詳細をなぜ社会保険庁は把握しているのでしょうか?会社の人事・総務担当者なら当然ご存知のことですが、毎年7月上旬に会社から社会保険事務所へ報告がされているのです。また、次の7月までの間に給与が増減(少額の給与の増減や、一時的な給与の増減の場合は報告義務がありません)した場合も同じく会社から社会保険事務所へ変更の報告がされます。
それでは、会社が社会保険事務所へ報告する金額自体に間違いが無いのか?と問われれば「それは会社の報告を信じるしかない」のです。ほとんどの会社は正直に申告をしますが、給与を30万円貰っていても会社が20万円と報告した賃金台帳であれば、そのまま標準報酬月額20万円という報告が記録として残ります。そこで資金繰りが厳しい会社では給与明細から30万円に対応する保険料を徴収し、社会保険事務所に収める時は20万円で処理するという禁じ手をしてしまうところも現れるのです。今までは、年金を受け取る場合になってそのことが判明しても、後の祭りということになっていました。 こういう事例は少なからずあったようで、救済のための法律ができました。不正をした(給与として30万円支払ったのに、20万円と報告をし、かつ10万円に対応する保険料をネコババした)会社については、その保険料を時効なしで遡及して支払いを求め、従業員の年金にはその期間を反映させるというのが骨子です。 参考 : http://www.sia.go.jp/topics/2007/n1218.pdf 全喪の問題もまた浮上
会社を清算をしたり、存続するにしても役員全員非常勤、従業員を解雇する等で、社会保険の被保険者がゼロになったりした場合は「全喪」(全部喪失の略)といって、社会保険事務所に届け出て会社が社会保険を脱退します。
ところが、しばらく前はこれをわざと行っていた会社もあったようです。つまり実際には会社が解散しない(従業員は残る)のに、形だけ書類を整えて社会保険を脱退することをしていたのです。 困ったことに、これをすると、厚生年金保険料の納付率が上がる(資金繰りが厳しく、保険料を未納する会社が減るわけですから)ので、社会保険事務所側でも悪い話ではなく、場合によっては積極的に勧める職員もいたようです(新聞報道による。社会保険庁は否定していますが)。 現在では、偽装脱退に関しては厳しく監視され、一旦会社を立ち上げて社会保険に加入したら、本当に会社を清算するまでは逃れる術はないのですが、以前はこのような抜け道が普通に行われていました。 これからの労務管理
私の知り合いの税理士も言っていましたが、中小企業にとって「社会保険料の負担」はとても重く感じるものだそうです。私は経営者ではないので、社会保険料の負担を実感することはできませんが、給与額の11%〜12%を会社が負担するのは確かに重たいものです。人件費(給与)が年間2,000万円(400万円×5人)の小さな会社でも、会社が負担する社会保険料の240万円ほどは、儲けがあろうがあるまいが固定的なコストとして避けられない出費なのです。
以前は税金の徴収が最も厳しく、ついで労働保険(労災、雇用保険)の順でした。社会保険(健康保険、厚生年金保険)については徴収が甘く、負担は重いのに加え、役所の加入指導も適当な時期もあったため、とりあえず加入手続きをしないで会社に余裕ができたらとアドバイスされることも普通だったのです。 しかし、これからはどうでしょうか。最近の年金問題の余波ということではないですが、会社の年金事務(事業所での加入の問題、保険料納付の問題)についても、厚生労働省、社会保険庁はさらに厳格に法律を運用していく方向であることは間違いありません。また、従業員の側でも会社が不正を行った場合は、後日しかるべき申し立てをすると救済されるということを学んでいます。 これからは「社会保険の問題」が今まで以上に会社の経営にリスク要因として影響を与えることになるのではないでしょうか。 2008.01.28
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