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知ってビックリ!年金のはなし
第38回 えっ4月から年金額が減る? 間違いです。
 
年金から源泉徴収をされているものがあります
 時々年金相談をすると、「最近年金の額が減っていますけど大丈夫ですか」という相談を受けることがあります。ところが、年金制度ができて以来、年金を受け取られている方の年金が減ったのは平成15年、平成16年、平成18年の3回で、その3回を合わせても1.5%の減額でしかありません。1万円の年金が150円減っただけです。しかも現在は、デフレによる場合でも年金額は減らさないという仕組みに変わっていますので、年金の額面が減ることはありません。

 でも、何かすごく年金が減っているような思いに駆られている方が多いのです。一体なぜだろうとすこし考えていたことがあります。

 そして一般的な人は、年金の受給額という時は、「手取り額」を考え、年金の「額面」にはあまり関心がないのだなと気づいたのは暫くたってからでした。
 ご承知と思いますが、年金は計算額まるまるが支給されるのではなく、源泉徴収されるものがあります。具体的に言うと税金(所得税)、および介護保険料です。

 ですから、介護保険料が改訂され、保険料が上がると年金の手取りが減ることになります。そこでそれを「年金の支給額が減った」というふうに誤解して慌ててしまったり、年金の不信感を強めたりする方がたくさん出てきたのです。
後期高齢者医療制度が始まります
 ところで、平成20年4月から始まる後期高齢者医療制度というのをご存知でしょうか?
 後期高齢者医療制度は、医療保険(健康保険、介護保険))の範疇ですのでここでは説明を省略しますが、この後期高齢者(75歳以降)医療制度の保険料については、年金から「保険料を天引きされる」ことになっています。

 詳細なスケジュールは
 http://www.tokyo-ikiiki.net/topic/data/rei.pdf にある通りです。

 これが実施されると当然ですが、「(額面の)年金額は変わらないけれど、年金の手取り額がさらに減る」ということになります。

 年金を受け取った時点では既に「介護保険と健康保険についての保険料の納付が終わっている」ことになりますから、正確ではないですが、「健康保険」の徴収方法が納付書による納付から源泉徴収に変わっただけと見ることもできるでしょう。

 ところが、その周知が徹底されていないと窓口や電話で「今年の年金額は昨年の据え置きだと聞いたのになんで手取りが減るんだ?」という問い合わせが頻発することになります。過去にも、税金は介護保険料が変わって年金からの源泉額が増えた場合には役所に問い合わせ(特に手取りが減った場合に)が増えたのだそうです。
年金制度への心配を避けるために
 この天引きの制度、年金受給者にとって物凄く心理的な影響が大きいようです。

 酷い場合には、「やれやれ、また年金額が減った。いよいよ年金制度も崩壊寸前か」と嘆く方まででてくることになります。
 確かに、年金財政は大変逼迫しており、とても余裕がある状況とはいえませんが、それでも隠れてこっそり年金を減らしたりするほどの状況ではありません。既に受給権が発生した方の支給は(物価スライドによる法律どおりの減額をした場合を除いて)、過去に意図的に減らされたことはありません。

 お客様に年金額が減ったという質問や相談をされた場合も、こういう医療保険制度の変更があったんだというふうにお答えできるように今から準備をしていたほうが良いかと思います。

2008.03.31
執筆者:桶谷 浩
[経歴・バックグラウンド]
大学卒業後、生命保険会社に勤務その後退職し、学習塾等に勤務
2001年社会保険労務士として独立開業
2002年FP登録(AFP、後CFPに)
現在、公的年金を中心に据え、成年後見・介護制度を併せて、広く老後の生活設計を考えるというテーマで、相談業務、講演、執筆など活動中。

2007年4月に合同会社電脳年金を立ち上げ。
[保有資格]
社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(CFP)、行政書士
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