第40回 介護と年金の関係
介護の勉強会に参加して
先日介護の勉強会に参加しました。
介護というと、「入浴とか排泄の介助」といったイメージを持たれやすいため、どうしても「実際の現場での介護の方法」などの話が多くなります。
しかし、介護については、もっと広い範囲で捉えないといけないと思います。入浴とか排泄の介助といった、「身体的な介護」はもちろん大切ですが、「お金の準備、管理」というのもきわめて大切なポイントとなります。
介護にお金のかかる時代
居宅介護にせよ、施設介護にせよ、家族の力だけで全ての介護が賄えるような家庭はめったにありません。家族の誰かが要介護状態になったときには、なんらかの介護サービスを利用して、お金をかけて介護しているのが実情です。「介護=お金」という見方はあまりいいものではないですが、現実問題としてお金がなければ介護保険も利用できません。
年金相談をすると、よく「早死にすると損だから年金は繰り上げて(減額されても)、早くもらいたい」という方がいらっしゃいます。
特にご家族の中で、どなたかが早く亡くなられて、年金保険料を長年掛けていたのに年金が全くもらえないか、もらえても雀の涙くらいになってしまったというような方の中にそういう気持が芽生えてくる場合が多いようです。
年金を損得だけで考えてしまうと、できるだけ早くもらう方が良いのかもしれません。そういう気持になる方が多いのは無理なからぬことです。
しかし、人間の寿命なんてわかりません。逆に長生きすることだってあるわけで、長生きしたほうが、金銭的な面からすると大変なのです。
健康で長生きするのならばあまり問題はありませんが、75歳の声、80歳の声を聞く頃になるとだんだんと介護の手助けが必要になってお金がかかるのが普通です。
介護を考えると繰上げ支給はお勧めしにくい
自分が介護する側の苦労をされた方は、自分が介護される時点でのお金の重要さを予測されるのでしょうか、年金の繰上げ支給というものにあまり興味を示されません。
早く年金がもらえるので、ちょっと魅力的に見えるのですが、65歳からもらえる国民年金を前倒しする繰上げ支給は、個人的には「介護の将来を考えるとお勧めしにくい選択」だと思っています。
よほど財産があれば別でしょうが、そうでもなければ、年金が老後の生活の柱となります。繰上げ支給はその生活の柱を「細くする」ということですし、その減額は一生続くのです。
60歳から65歳までの間は、繰上げ支給の恩恵を受けたとしても、その方がもっと高齢になって介護サービスを受けるようになる頃に「年金額が少なくて思うような介護を受けられない」というのであれば、周囲の方(子供を始めとして)にとっても辛いことになります。
60代から自分自身の介護は始まっている
年金相談をしていると、安易に繰上げを希望する方がいらっしゃいますが、自分が介護される将来のことまで考えてよくよく検討してからにしてほしいと思います。60歳からもらえる制度があるからといってすぐに飛びつくのではなく、少し我慢して任意加入で年金額を増やすべきかどうかを考えるというような、60〜65歳時点での年金に対する判断からすでに「自分自身の介護」は始まっているのです。
年金と介護の関係について、前々からそのようにそういうことを思っていたのですが、今回の勉強会でもその気持ちはさらに強くなりました。
2008.04.28
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執筆者:桶谷 浩
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[経歴・バックグラウンド]
大学卒業後、生命保険会社に勤務その後退職し、学習塾等に勤務
2001年社会保険労務士として独立開業
2002年FP登録(AFP、後CFPに)
現在、公的年金を中心に据え、成年後見・介護制度を併せて、広く老後の生活設計を考えるというテーマで、相談業務、講演、執筆など活動中。
2007年4月に合同会社電脳年金を立ち上げ。
[保有資格]
社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(CFP)、行政書士
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