第41回 年金の情報は旬の期間が短い
年金に裏技とか有利な受取方法とかあるのでしょうか?
年金の裏技とか得をする年金とかいう表題の本がでています。実際の年金相談でも時々聞かれますし、何か特別なものがあるように一般的には思われていますが、公的年金というのはあまねく国民一般が加入する極めて公益的なものですから、基本的にそんな美味しいものがあるわけはありません。ただ、一般の人がわかりにくい(あまり知らない)が、知っておくと有利な情報もあります。そこを基にしてお客様の相談を受けるとお客様に喜ばれたりしますからそれが得をする年金情報といえば情報なのでしょうか。
ところで、「そういう飯の種の情報はあまり外にはださないのでは?」なんていわれることがありますがそんなことはありません。年金情報というのは、とても変化が激しいので、極めて出し惜しみのしにくいものなのです。
こんなアドバイスももう使えなくなります
在職老齢年金という制度があります。60歳を迎えて年金を受取ることができるようになった人が、継続して厚生年金に加入している場合に、年金額が調整(減額または停止)されるという制度です。
少し前、業績の上がらないため給与を下げようか悩んでいる会社の社長さんに対して、給与50万円を42万円くらいに落としてみたらという提案をしたことがあります。
社長さんの年金額をここで15万円とすると、給与を42万円(平均標準報酬額41万円)に落とすことで、全部停止されていた在職老齢年金が一部停止に変わり、1万円だけですが年金がでるようになります。定額部分が支給される年齢に達している場合には、これに加給年金が加わります。加給年金額は、在職老齢年金の仕組みで年金が一部停止されていたとしても減額されず、丸々3.3万円もらえます。定額部分の支給開始年齢に達している場合(加給年金が支給される年齢になった場合)、受け取ることのできる年金は月額4.3万円くらいになり、給与を下げたことにより所得税、住民税、健康保険料および厚生年金保険料の負担が減り、給与ダウンは8万円でも実質は2万円程度しか手取りが変わらない、そんな提案でした。
ポイントは、「定額部分が支給される年齢に達している」ことと「年金が全部停止にならないぎりぎりの給与額にする」ということで、加給年金(年36.9万円、月額で3.3万円)が丸々もらえる設定としたというところでした。
定額部分の支給がなくなりますので
ところが、そんな提案ももう使えなくなります。昭和24年4月生まれ以降の男性ですと、60歳〜64歳の期間に支給される定額部分は一部例外を除いてもらえなくなり、65歳から「加給年金」が支給される形になります。そして65歳というとご存知のように、「在職老齢の全部停止」の調整基準が緩くなる年齢です。
65歳を過ぎると、基準が緩くなり滅多に「年金が全部停止」にはなりません。そうすると加給年金額の3.3万円をもらうために微妙な調整を考える場面が極端に少なくなくなります。
加給年金額をもらうために給与を調整する手法はしばらくの間使えたのですが、めまぐるしく変わる年金制度では今ある知識や情報、提案がすぐに陳腐化していくことはしょっちゅうです。
たとえば、最も旬なねんきん特別便がらみの話題はどこへいっても引っ張りだこですが、来年の今頃には間違いなく全く姿を消してしまっているでしょう。情報の出し惜しみをしたくてもする必要がないことが多かったりします。
2008.05.26
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執筆者:桶谷 浩
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[経歴・バックグラウンド]
大学卒業後、生命保険会社に勤務その後退職し、学習塾等に勤務
2001年社会保険労務士として独立開業
2002年FP登録(AFP、後CFPに)
現在、公的年金を中心に据え、成年後見・介護制度を併せて、広く老後の生活設計を考えるというテーマで、相談業務、講演、執筆など活動中。
2007年4月に合同会社電脳年金を立ち上げ。
[保有資格]
社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(CFP)、行政書士
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