第42回 長寿医療制度と年金からの保険料の天引き
長寿医療制度が始まり保険料の年金からの天引きも始まった
4月から長寿医療制度が始まりました。
予想したとおり現場は大混乱状態です。残念ながら多くの方が指摘されているように準備が足りていませんでした。
ここは年金制度に関することを取り上げる所ですので、長寿医療制度自体の内容には触れませんが、長寿医療制度の保険料の年金からの天引き制度に関連して少し触れてみたいと思います。
長寿医療制度は、一部の人をのぞいて原則として「75歳」を迎えた人が加入する制度です。そして長寿医療制度の保険料は、個別に(2人夫婦の世帯であっても別々に)計算されます。
今までの健康保険制度には、「扶養」という概念があり、また国民健康保険には扶養という概念はないものの「世帯合算」という考え方があって、世帯全体の収入で(夫婦2人ならその2人の収入を合算して)国民健康保険の保険料額を計算していました。それに比べると大きな変化になっています。
国民健康保険の保険料の年金からの天引きも同時に始まった
さて、上記で強調したように、長寿医療制度に入る、入らないという基準の年齢は75歳です。そしてもし4月からの年金天引きが、75歳からの長寿医療制度の対象者だけであれば、少なくとも年金からの天引きに関してはここまで酷い混乱にならなかったと思います。
問題は、医療保険では制度変更の対象となっていない75歳未満の国民健康保険に加入者からも年金天引きを同時に始めたことです。
なお、ここでの該当者は65歳から上の人を指します。64歳までの特別支給の老齢厚生年金をもらっている人は年金からの天引きの対象とはなりません。65歳〜74歳で国民健康保険に入っている人が国民健康保険料の年金からの天引きの対象です。
2つの制度が同時に走り出したことによる混乱
年金からの保険料天引きの対象になるか否かの分岐点は65歳
長寿医療制度の対象となるか否かの分岐点は75歳
65歳までは天引きは関係ない世代、65〜74歳までは 医療保険=国民健康保険が天引きされる世代(在職者は天引きしません)。75歳以降は 医療保険=長寿医療制度の保険料が天引きされる世代。
という三層構造になってしまったのです。
これでは混乱するのも無理ありません。しかも、単身の世帯ならこの3つで事が足りますが、これが夫婦の場合、お二人の年齢が違いますから、夫が70歳で、妻が64歳、妻が68歳、妻が75歳というような細かい場合分けが必要になり、医療制度が夫婦で同じだったり違ったり、天引きになったりならなかったり混乱するわけです。これを4月から周知不足のまま「せえの」で始めてしまったのです。
落ち着き始めてはいますが
長寿医療制度が始まってしばらく経ったため、行政側では、資料や対応マニュアルなどの整備も進んでおり改善されていくでしょう。
しかし、年金からの保険料の天引きのしくみ自体がわかりやすくなったわけではないのですから、今後も「何がなんだかよくわからない」という問い合わせがしばらく続くかもしれません。次の年金支給日からは落ち着いてくれると良いのですが。
2008.05.26
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執筆者:桶谷 浩
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[経歴・バックグラウンド]
大学卒業後、生命保険会社に勤務その後退職し、学習塾等に勤務
2001年社会保険労務士として独立開業
2002年FP登録(AFP、後CFPに)
現在、公的年金を中心に据え、成年後見・介護制度を併せて、広く老後の生活設計を考えるというテーマで、相談業務、講演、執筆など活動中。
2007年4月に合同会社電脳年金を立ち上げ。
[保有資格]
社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(CFP)、行政書士
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