>  知ってビックリ!年金のはなし >  第43回 加給年金は実際に直面すると大変です(1)
知ってビックリ!年金のはなし
第43回 加給年金は実際に直面すると大変です(1)
 
加給年金が出るかで無いかギリギリのところ
 先月年金相談をお受けした方の話です。

 その方はもうすぐ60歳になられる方でした。あまり深い意味はなくほんの軽い気持で年金相談にこられました。
 お話の途中で、ふと60歳(お誕生日は今年の9月)になったら、今の勤務先を辞めるとおっしゃられる。

 そこで、お持ちになっていた年金記録をみせてもらってびっくり。今年の9月までお勤めになってお辞めになると、厚生年金の加入月数が242(20年と2カ月)となるのです。さらに突っ込んでご主人の年金履歴をお聴きすると、8歳年上のご主人はかなり長い期間会社にお勤めであったそうです。
しくみを復習しましょう
 年金のしくみの復習をしてみましょう。このケースの場合はどういうことが考えられますか?

 奥様が20年を越えてお勤めになると、奥様が60歳になって手続をした時点でご主人についている加給年金が停止になります。そしてもちろん奥様が65歳になった時に支給される振替加算もありません。ところが20年未満に加入月数を止めておけば、加給年金も振替加算もきちんと支給されることになります。加給年金と妻の振替加算を足し合わせて平均寿命までもらえるとして、累計額を試算してみると結構な額になります。電卓をたたいてみると累計200万円を越えるほどの受取額の差になるという試算結果になりました。

 この一連の話は、まるで年金テキストの加給年金の説明の中に出てくるような典型的事例ですが、実例に出くわすとなかなか対応は大変です。
年金を考慮するケースはそう多くないのですが
 現実にはこういうことが問題になるケースはそう多くありません。
 というのは、年金の損得以前に会社を辞めることにより給与がもらえなくなるマイナス要因のほうがはるかに影響が大きいからです。
 お客様への説明では「年金だけのことを考えると加給年金がつかないことにより損になるけれど、働いたほうがいいですよ」というアドバイスに普通なるわけです。大抵は加入期間20年を越える時点から60歳まで時間があったり、60歳を越えていても嘱託で2、3年働けたりします。給与15万円で2年働けば、給与だけでも2年で360万円になりますが、年金に加給や加算をつけるために辞めてしまうとこれを得る機会を失うことになります。実際にこの奥様の年収は400万円程ありました。ですから、60歳を過ぎても継続して働く、あるいは働けるなら(法律上は60歳を過ぎても雇用あるいは再雇用の義務があります)断然働くことを選択するほうが良いのです。

 加給年金を得るために、“加入期間20年直前に正社員を辞めて、パートアルバイトの短時間扱いで継続して雇用”ということもできますが、それとて勤務時間を4分の3までにしなくてはいけません。上の奥様のように年収が400万円ある方ですと、単純に考えて300万円以下になることは明らかです。したがって2、3年も今後働けるのであるなら、やはり年金のために退職するより正職員でいるほうが給与以外の福利厚生等のメリットもあり良いのです。

 ところが例外的に深刻に考えなければならなくなる場合があります。もう60歳で体の調子が悪いから60歳の区切りで辞めようか、とか 定年の63歳とか65歳で20年を少し超えてしまう場合とかです。つまり会社を辞めた時点で加給年金がつくかつかないかの微妙なタイミングに該当する場合です。今回はまさにそのケースでした。
2008.07.07
執筆者:桶谷 浩
[経歴・バックグラウンド]
大学卒業後、生命保険会社に勤務その後退職し、学習塾等に勤務
2001年社会保険労務士として独立開業
2002年FP登録(AFP、後CFPに)
現在、公的年金を中心に据え、成年後見・介護制度を併せて、広く老後の生活設計を考えるというテーマで、相談業務、講演、執筆など活動中。

2007年4月に合同会社電脳年金を立ち上げ。
[保有資格]
社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(CFP)、行政書士
  ページトップへ