第45回 禁句「…だと思います」
年金ダイヤルに電話してみました
ついこの前のことです。年金関係の書類の確認のためにねんきんダイヤルに電話をしました。我々が電話をする時は、込み入った案件だったり、あまり出くわさないレアケースの手続きであったりすることも結構多いです。ですから、電話を受ける側も大変なのはわかります。
ですから、最初からすぐに返事をもらえるとは思っていません。調べてもらって回答をもらえばOKなのです。
最初に出た女性はいろいろと説明をしていて、「ちょっとお待ちください」と電話を保留するかと思いきや、なにをどう間違えたのか途中で電話を一方的に切ってしまいました。電話の扱いに慣れていなかったのか、切れてしまったものは仕方がありません。ただ、まじめに話を聞こうとはしていました。
で、あきらめずに電話して次に出てきたのは中年くらいの年齢(の声)の男性でした。この方も誠実は誠実でした。
でも、最初の女性と次の男性の電話の応対は、年金を扱う者として物凄く気になりました。
最初の女性の場合、
「・・・ではないでしょうか?」という表現をいくつかしました。
次の男性の場合も、
「・・・だと思います」 という表現をしました。
だと思いますは、個人的意見にしか過ぎない!
これは本当に困ります。我々が聞きたいのは、「結論」であって、あなた個人の意見や憶測を聞いているわけではないのです。
年金ダイヤルを担当している人は、パート・アルバイトのような期間雇用の人が中心なのは知っています。教育期間も短いし、それに反して年金は難しい。しかしいくら民間委託をしているとはいえ、「国の行政に携わっている」ことは間違いがありません。
年金の勉強を始めた時、大先生が「年金相談においては結論を言わないのは誠によろしくない」ということをおっしゃいましたが、普通の年金相談の現場でもそれは痛いほど感じます。ましてや、最終の砦となる社会保険庁が「わかりません」とか「こうではないでしょうか」とは言ってはいけません。
雇用形態がどうであれ、対応に出た電話相談員は、電話をする側にとっては国そのものですから、「年金が出るかでないか?」 という問いに「出ると思います」とか「この書類が必要か」 という問いに 「必要だと思います」 とか個人的な意見を述べられても何も解決しないのです。
年金が「出ると思います」 という言い方をお客様が信用して、社会保険事務所に行って年金を手続しようとしたら年金が出ない。 そうなったら、普通に国民は怒りますよね。また社会保険庁不信を増大させる結果となります。
もっと使える電話相談を
我々も相談現場で年金の細かいことを聞かれてよくわからず、たじたじになることもあります。
以前に先輩にその対応を聞いたことがあります。そうすると大抵「私はこう思いますが、自信がありませんので後できちんと調べた上で確認をしてご回答申し上げます」と保留にするというアドバイスを受けます。あやふやなことは必ず後でフォローをする。遅滞なくお返事をすれば、クレームにもなりません。
電話のコールセンターというのは民間の会社でも下請のような別会社が多いのでしょうが、別会社であっても会社全体の印象を大きく左右します。これは国でも同じでしょういきなり途中で(ミスとはいえ)電話を切られたり、2回も推定でものを言われたりすると、かなり印象が悪くなります。
社会保険庁のパンフレット等では、なんでも年金ダイヤルにお気軽にお問い合わせくださいというイメージで電話を受け付けています。
気軽にもっと電話をしたいのですが、もうちょっと質を上げてほしいなと切に思います。年金知識の習得より先に、自分たちがどういう立場にいるかを認識しそこで受け答えを考えること。まずそこから出発です。
2008.07.28
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執筆者:桶谷 浩
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[経歴・バックグラウンド]
大学卒業後、生命保険会社に勤務その後退職し、学習塾等に勤務
2001年社会保険労務士として独立開業
2002年FP登録(AFP、後CFPに)
現在、公的年金を中心に据え、成年後見・介護制度を併せて、広く老後の生活設計を考えるというテーマで、相談業務、講演、執筆など活動中。
2007年4月に合同会社電脳年金を立ち上げ。
[保有資格]
社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(CFP)、行政書士
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