第49回 窓口の混雑は減ったものの
遅れに遅れている処理
私の大先輩にあたる某先生が数カ月前に年金裁定(再裁定=一度決定した年金を後からミス等があったため裁定をしなおすこと)を行った分が、全く連絡がない状態になっているそうです。業を煮やしてその先生は進捗状況を書類を提出した社会保険事務所に確認すべく電話をされました。
ところが、これもなかなか返事がこない。やっと来た返事は芳しくないもので、結論をいうと「業務全体が滞っており、いつになるかわからない」というものでした。
先生は皮肉に「じゃあ来年になるか再来年になるかわからないのですね」と電話を切られた。
私が扱った事例にもイライラするものがありました。
年金手帳を2つ持っていらっしゃるお客さんがいて、当然これではまずいので、番号を基礎年金番号に統合(一つに)する必要がありました。その手続きをしたのが5月の半ば。ところがすっかり処理が終わっていたと思っていたらお客さんに8月下旬に来た「ねんきん特別便」では、その記録がまったく反映されていなかったのです。
驚いてすぐに問い合わせをしたのですが、結局その特別便が送られたわずか1日後に統合の手続きが行われていました。
「大丈夫、心配ありません」 そう担当者は答えるものの、単なる統合手続が3ヵ月半もかかるのには納得がいきません。この方は年金手続きが11月に控えていたのですが、その手続きが遅延したおかげでターンアラウンド裁定用紙(年金裁定請求書の事前送付)も送られてこなかったのです。民間でこんなに事務が滞っていたら怒鳴られてお客さんを失ってしまいます。
予想されたことだと思うのですが
年金問題が昨年から話題になり、昨年末からねんきん特別便を始め、専用の電話も設けて、「わからないことがあったら何でもご連絡ください」という、体制を敷いたことは大きな進歩です。
しかし、年金の件が社会問題化しているなか、押し寄せるであろうと容易に想像できた怒涛の事務処理に対しての備えはあまりしていなかったように思います。年金を仕事としている複数の知り合いからも「最近の社会保険事務所の事務の遅れ」の話はよく聞きます。
電話を受けたり、相談を受けたりするだけのことは簡単です。アルバイトを雇えばすむことかもしれません。ところが問題はその次です。実際に疑問があった場合の調査や、何十年も前の手続きのやり直しという場面になると、これは素人のアルバイトができる話ではありません。簡単に右から左に流せる作業じゃないですからね。
社会保険庁は今回の一連の特別便のためにマンパワーを増やしたということですが、こういう所にもきちんと人員を配置し、滞りなく事務が遂行されないと国民の不満は高まります。
高齢者の分は優先して
冒頭の先生は、大正生まれのような高齢の方の手続きくらいは最優先で行うべき(つまり優先順位をつけるべき)だとおっしゃっていましたが、私もそう思います。
人生、寿命は有限です。 大正以前生まれの人は若くても80歳を超えていらっしゃるわけですから、手続きが長引いて2年も3年もかかれば、宙に浮いていたとされていて貰い忘れていた年金が支給される頃になるとすでにもう亡くなってしまっていたなんてことにもなりかねません。そうなると本当に何のための特別便なのか、その意味が半減してしまいます。
年金で大昔の記録をたどるのはとても大変なことで、また5,000万件も宙に浮いた記録があればその記録を訂正統合するのはものすごい時間のかかることです。しかし、そんなことは最初から予想ができたはずです。
皆さんの周囲には上の例のように手続きがほったらかしにされた方はいらっしゃいませんか。各種の書類(年金の調査等)を出された方は気長にその結果を待つしか他に方法がないようです。
2008.09.29
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執筆者:桶谷 浩
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[経歴・バックグラウンド]
大学卒業後、生命保険会社に勤務その後退職し、学習塾等に勤務
2001年社会保険労務士として独立開業
2002年FP登録(AFP、後CFPに)
現在、公的年金を中心に据え、成年後見・介護制度を併せて、広く老後の生活設計を考えるというテーマで、相談業務、講演、執筆など活動中。
2007年4月に合同会社電脳年金を立ち上げ。
[保有資格]
社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(CFP)、行政書士
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