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知ってビックリ!年金のはなし
第54回 ほんのちょっとの心遣いで変わる、ねんきん特別便
 
ねんきん特別便の回答率が半分にも達していません
 年金の加入記録を洗い直し、国民へ正しい年金を支給するために始まったねんきん特別便ですが、新聞報道によると極めて回答率が低く、9月30日まで計8,811万人に送られた特別便のうち、46.5%に当たる4,100万人から返答がなく、171万人分はあて先不明で届いていないという状態だそうです。3月までに送られた、特に「漏れの可能性の高い」と思われる人でさえ、1,030万人のうち回答者は655万人で、回答率は63.5%にとどまっているそうです。

 ねんきん特別便を送るために莫大な経費コストがかかっているのですが、この回答率では、うまくいっていないだろうと批判されてもおかしくないという状態ですね。

 そもそもこういう照会に対して最初からきちんと返答する意思のない方や、そういうことにルーズな方もいます。ですから最初から100%に近づくような回答率を期待するのは無理です。しかし、そういう方でなく、真剣に「回答したいけれどよくわからないから放ってある」という声も、年金相談の現場でよく聞きます。

 そういう人は、きちんと対応をしていれば「未回答」にならなかったのです。この対応の部分はねんきん特別便を発送した側に問題があると言わざるを得ないでしょう。
最大の理由は「内容がわかりにくいから」
 わからないから放ってある最大の理由は、とにかく年金がわかりにくいということです。これは以前にも触れたことがあるかと思います。

 一例ですが、この前相談をされた方は、未納がないはずなのにずいぶんと加入月数と納付月数が違うということを言われていました。
 この方は、60歳をすぎて国民年金の任意加入をしていた方で、60歳を過ぎていた期間は任意加入により加入月数は伸びていくけれど、納付月数は60歳のままで止まっている状態でした。
 つまり、任意加入後の保険料を納付してもその分の納付月数のカウントはないのに加入月数はカウントされその差がどんどん開いていっているように表示されるのです。これは元々がそういう仕様になっているので仕方がないことです。でも、そんなことは普通の人にはわからないですよね。自分ではちゃんと保険料を納付しているつもりなのに、見かけは未納扱いにされたりすると納得いきませんよね。
 そして、それを確かめようとしても社会保険事務所は長蛇の列で、電話もなかなか通じないのです。
ほんのちょっとの心遣いがあれば
 さて、年金がわかりにくいという問題の解決はかなり困難です。年金システムにまでかかわる問題でしょう。ですから不満もありますが現状仕方がないと置いておくとして、それよりもっと単純でかつ重要な問題があります。

 年金相談をしていて、ねんきん特別便を前に、「これは間違いないと思うけれど自信がないから送っていない」と言う方が結構いらっしゃいました。

 そうなんです、「ねんきん特別便」で「記録に間違いがない」に〇をつけて返送すると、それで年金履歴が確定してしまうと誤解されている方が結構いらっしゃったのです。

 もちろんこれは違います。間違いがないと特別便を返送をしてもその後、「あのとき働いていたのを忘れてしまった」と後で気がつき、なおかつその期間が確かにあったならば記録を訂正してもらえる、つまり訂正や修正がきくものなのです。

 ねんきん特別便の説明用紙には、そのことが書かれていません。
 こういう大切なことは最優先で書いておくべきものではないでしょうか?

 まったく個人的な意見ですが、「特別便の返信で間違いがないと記載された方でも、その後に納付期間が見つかった場合は年金額を訂正いたします」と書いてある、あるいはもっと強力にキャンペーンをしていれば、わずかなりとも回答率も上がったような気もするのですが。
2008.12.01
執筆者:桶谷 浩
[経歴・バックグラウンド]
大学卒業後、生命保険会社に勤務その後退職し、学習塾等に勤務
2001年社会保険労務士として独立開業
2002年FP登録(AFP、後CFPに)
現在、公的年金を中心に据え、成年後見・介護制度を併せて、広く老後の生活設計を考えるというテーマで、相談業務、講演、執筆など活動中。

2007年4月に合同会社電脳年金を立ち上げ。
[保有資格]
社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(CFP)、行政書士
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