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知ってビックリ!年金のはなし
第56回 国民年金任意加入のお話
 
とても有利な国民年金の任意加入
  国民年金の任意加入という制度があります。みなさんもよくご存じか、そうでなくても名前だけは聞いたことはあると思います。
  国民年金の納付期間が40年に達していない人が、国民年金の満額納付期間40年にする、または40年に近づけるために自分から進んで60歳以降も(60歳までは国民年金の強制加入)国民年金に加入し続ける制度です。
  国民年金保険料を40年満額納付をされた方、および60歳以降も厚生年金に加入されている方は、残念ながら加入することはできません。
  この制度については、大変有利だということが以前からあちらこちらで指摘があり、今回パソコンでその有利不利を計算してみました。
  前提として使ったのは第20回完全生命表(2005年)で、その中の生存数を使って算出します。
計算方法
  まず平成21年から25年まで5年間任意加入の保険料を支払ったとして、支払保険料合計を出します。次にそれに応じて増える年金額を計算し、5年分の支払い保険料合計を、増加した年金額で割り、単純に何年生存したら元が取れるかを算出します。65歳から国民年金を貰うとすると、大体74歳と3カ月で元が取れると計算されます。
  次に、生命表を見て60歳を基準に74歳まで生存する人の割合を出します。74歳まで生存すれば任意加入しても元が取れるわけですから、74歳までの生存の可能性を出すことによって、任意加入の元を取る確率がわかります。複雑な計算ではないのですが、文字にするとわかりにくいので結論だけを数字でみてみましょう。

    60歳の人が74歳まで生存する確率は
       男性 79%  71571/90233 =  0.793
       女性 91%  86270/95086 =  0.907

  男性で8割近く、女性では9割以上の方が任意加入で元が取れることがわかります。
  国民年金の受取は65歳からですから、65歳から74歳まで9年で元が取れます。さらにその2倍の期間である18年間(65歳から83歳まで)生存すれば、任意加入として支払った保険料の2倍に相当する年金を受取るということになります。

      60歳の人が83歳まで生きる確率は
         男性 50% 44913/90233 = 0.498
         女性 73% 69354/95086 = 0.729

  男性では約半数、女性は7割を超える方が任意加入して支払った保険料の2倍の年金を受取ることができるわけです。

      興味のある方は生命表をどうぞご覧ください。
       http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/20th/sh01.html
       http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/20th/sh02.html
5:7:8:9で考える任意加入
  細かいパーセンテージはなかなか覚えられませんが、上記のデータから、任意加入をした場合、
      2倍の年金を受取れる確率(男性)→約5割
      2倍の年金を受取れる確率(女性)→約7割
      元を取れる確率(男性)→約8割
      元を取れる確率(女性)→約9割。
      単純にすると5:7:8:9となります。

  任意加入として支払った保険料の2倍を受取れるというのはあまり重要ではありませんが、最低でも元を取る確率の、8割、9割は覚えておくと良いと思います。
  残念ながら1割、2割の方は、元を取らずにお亡くなりになるので無理強いをすることはできませんが、任意加入(特に女性の場合)はかなりお得であることは間違いありません。定期預金で100万円持っているくらいなら、老後のことを考えて国民年金を増やすという選択肢もありなのです。このデータを見た後、お知り合いの女性から「任意加入しようと思うんだけれど…」と相談されたら、どんなアドバイスをしてあげますか?
付加保険料も忘れずに
  付加保険料(付加年金)は通常の国民年金保険料に400円を追加して支払うと、受取る年金が月額200円増える制度です。受給開始から2年間で元が取れ、3年目以降は生きているだけお得になります。
  国民年金の任意加入は、年金額を増やすことを目的としていますので、「付加保険料」をセットすることで元を取る年齢がまた少し早まります。
2009.01.13
執筆者:桶谷 浩
[経歴・バックグラウンド]
大学卒業後、生命保険会社に勤務その後退職し、学習塾等に勤務
2001年社会保険労務士として独立開業
2002年FP登録(AFP、後CFPに)
現在、公的年金を中心に据え、成年後見・介護制度を併せて、広く老後の生活設計を考えるというテーマで、相談業務、講演、執筆など活動中。

2007年4月に合同会社電脳年金を立ち上げ。
[保有資格]
社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(CFP)、行政書士
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