第61回 実務的なことも少し知っていると説得力が違います
実務知識は確かに必要ではないのですが
FPの方は年金について、一般の方より知識が多くあるのは当然です。しかし提案業務がメインのため、実務にはあまり携われていなく、詳しくない方が多い。
しかしお客さまは、当然ですが年金について「なんでも知っている」と思われる方も多いのです。そこで、基本的なことで答えに詰まると「この人、大丈夫かな?」という不安を与えてしまうことにもなります。普段使わないからといってないがしろにせず、年金についての基本的な実務知識を蓄えているとお客さまからの印象ポイントが上がることでしょう。
例えば、こんなことです
「公的年金っていつからもらえて、いつまでもらえるの?」
お客さまからこの質問をされた場合、どうでしょう? 年金の支給開始の年齢が何歳ということには即答できるでしょう。
ではさらに突っ込まれて、例えば3月15日生まれの人が60歳を迎えたとき、実際に何月分から年金がでるの? と聞かれたときはどうでしょう。考えられるのは3つです。
1.3月分は日割りになり、おおよそ半分ほど支給される。
2.3月分はまるまる1カ月支給される
3.3月分は支給されない(4月分から支給される)
さてどれでしょう?
正解は3.です。3月15日生まれの方は3月に権利が発生し、4月分から年金が支給されます。ただし、誕生日イコール60歳に達した日ではなく、法律上は前日の3月14日に60歳になるため、各月の1日生まれの人は注意が必要です。
1.についてですが、一般に公的年金の制度には、日割りという考え方をしません。例えば加入月についても、3月20日退社の人が、翌21日から自営業として働くことなった場合には、3月はまるまる自営業の扱いで国民年金に加入していた月になります(厚生年金の保険料は支払わない)し、逆に自営業だった人が3月21日から会社で働き始めた場合は、その月はまるまる厚生年金に入っていた月(厚生年金の保険料を日割りせず支払う)となります。ただし事故が起きた場合の障害、遺族年金の扱いについては「その日」にどの年金制度に加入しているかが重要になりますのでお間違いないよう。3月20日に厚生年金の加入事業所を退社し、同じ月の25日にけがで障害状態になったとしても障害厚生年金の対象とはならず、国民年金からの障害厚生年金の給付しかありません。
いつまでという問題は?
それでは、いつまで支給されるの? という質問はどうでしょう? 終身年金ですから、亡くなるまで支給されるというのは基本的に分かりますけれど、亡くなった日の属する月はどうなるんですか? という質問にはどう答えますか。日割りにはしないことは前述の説明でご理解いただけましたよね。
結論を言うと死亡した日の属する月まで支給されます。そこで公的年金は、2、3月分を4月に、4、5月分を6月にというように後払い支給をしているので、死亡した方には支給を受けていない年金(これを未支給年金といいます)が必ず発生してしまうことになります。
これは別途請求(通常は社会保険事務所への死亡の届出と同時に請求書を提出します)しないと支給されません。かつ生存時の月に該当する年金で当然生前の本人がもらうべきお金ですから請求すれば必ず支払われるかといえばそうではなく、受け取ることができる人は生計同一であるという条件がつき、なおかつ遺族厚生年金と同じように受け取る人の順位が決められています。その人の相続人だからといって必ずもらえるものではない。この点ちょっと厄介ですが法律で決まっていることなので仕方がありません。
2009.04.13
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執筆者:桶谷 浩
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[経歴・バックグラウンド]
大学卒業後、生命保険会社に勤務その後退職し、学習塾等に勤務
2001年社会保険労務士として独立開業
2002年FP登録(AFP、後CFPに)
現在、公的年金を中心に据え、成年後見・介護制度を併せて、広く老後の生活設計を考えるというテーマで、相談業務、講演、執筆など活動中。
2007年4月に合同会社電脳年金を立ち上げ。
[保有資格]
社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(CFP)、行政書士
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