>  知ってビックリ!年金のはなし >  第64回 ねんきん定期便と年金の特徴
知ってビックリ!年金のはなし
第64回 ねんきん定期便と年金の特徴
 
ねんきん定期便の送付が始まりました
  新年度の年金の話題といえば、何といってもねんきん定期便です。
  すでに、社会保険庁のウェブサイトで概略や送付文章等の詳細をアップしていますが、早速私も実際にお客さまに送られてきた現物の定期便を見ることができました。4月が誕生日の方はもう送られてきたことでしょう。ねんきん定期便自体の細かいことは、自分で文章に書くにはまだ十分ではない状況なので、その内容の詳細については少しずつ追って、触れていきたいと思います。
記憶違いのために国が悪者になる
  私の知り合いの方から聞いた話です。
  とある方が、昭和61年以前に海外で生活されていて、海外生活の間の国民年金の保険料を、お母さんが任意加入として納付されていた。それなのに納付記録が全くないと、ずいぶんとお怒りで相談されてきたのだそうです。
  結論は「お母さんの記憶違いです」と即断できます。理由は、現在は海外で住んでいる期間は、任意加入で国民年金の保険料を納付することができますが、昭和61年以前の海外在住期間は任意加入ができなかった(適用除外期間といい、カラ期間にはなります)のです。年金の仕組みとして「保険に加入することができなかった期間」なのですから、どこをどうしたとしても、お母さんがお子さんの年金保険料を納付することはできません。もちろん記録も残るわけもなく、当たり前のこととして当時の役所も保険料を受け取らなかった(法律的に受け取れなかった)はずです。制度そのものがなかったわけですから。
  しかし、「支払った」と親に聞かされた人からすると、国よりも自分の母親を信じたくなるわけで、どうしても納得がいかないということになります。
私も経験があります
  同じようにお客さんにずいぶんと苦情を言われたことは私も経験があります。お客さんで自分が大学生のころ、「親父は自分の国民年金を支払っていたはずだ。であるのに記録が全くないのはけしからん」と言われた方がいるのです。
  しかし、お話をお聞きすると、その方が大学生でいらした時期は昭和36年より少し前だったのです。国民年金が始まったのが昭和36年4月ですから、それ以前に学生の任意加入どころか国民年金に加入することは物理的にできません。保険料を納付していることはないのです。しかしその方も「生前に親父から聞いたことだから間違いない」と譲られませんでした。
  いろいろと不祥事の続く厚生労働省、社会保険庁ですけれど、さすがにこの辺りになると少しかわいそうだな、と同情したくなります。上記の2つのケースは親の記憶違いに間違いありませんから。
結局その場で確認していなかったことが原因
  昭和61年ごろといえば、今から20年以上も前のことです。昭和36年といえば48年前のこと。その当時の様子がどうだったかとか、そのとき親が保険料を払ったかどうかということは、今となっては全くわかりません。
  保険料を40年掛けて年金を20年もらうというのが年金制度であることを考えると、人生の4分の3にわたってお付き合いをする、極めて期間の長い制度です。
  ですから、保険料を払った・払わなかった、あるいは保険料の計算は妥当だったかどうかなどは、記憶が鮮明なうちにきちんと確認しておくべきことなのです。以前にも、給与明細を保存しておくことをお勧めしましたが、年金記録がきちんと毎年照合されていれば、保存する重要性も少し下がります。
年金信頼回復の第一歩
  ねんきん定期便は直近1年間の保険料の納付状況および厚生年金の保険料額をきちんと知らせますので年金制度の信頼回復のためにはとても大きな進歩です。今のトラブルを今のうちに解決しておけば、将来になっての保険料を払った、払わなかった、という問題は減少するでしょう。
  国民の側も、通知が来るときには知らん顔をして、年金をもらえるころになって、あそこは違うとかここはおかしいとかいうことは、言いづらくなることも確かです。ねんきん定期便をゴミ箱に直行させるのではなく、自分自身の問題として、きちんと確認をしてみましょう。
2009.05.11
執筆者:桶谷 浩
[経歴・バックグラウンド]
大学卒業後、生命保険会社に勤務その後退職し、学習塾等に勤務
2001年社会保険労務士として独立開業
2002年FP登録(AFP、後CFPに)
現在、公的年金を中心に据え、成年後見・介護制度を併せて、広く老後の生活設計を考えるというテーマで、相談業務、講演、執筆など活動中。

2007年4月に合同会社電脳年金を立ち上げ。
[保有資格]
社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(CFP)、行政書士
  ページトップへ