第65回 保険セールスのための年金(2)
対象とする年齢の違い
第63回に続き、「保険セールスのための年金」を取り上げます。
金融機関で扱う公的年金と、保険セールスで扱う公的年金ですが、その相談となる人の対象が異なります。今回はここに触れてみましょう。
銀行をはじめとする金融機関の場合
金融機関で扱う年金は、第63回でも説明したように、「受給権が間近」な人の相談が中心となります。振込口座を獲得するという点からしてこれは当然のことです。年金裁定手続きまであと10年、20年という場合(40歳とか50歳という場合)は、ターゲット層としてはうれしくありません。
極端な例では、金融機関としてはすでに年金を受け取っている80歳の方が何かの理由で年金相談に来られたとしても、それはそれで「うちで受け取られたらどうですか?」と、違う金融機関を振込先にしている人には変えてもらう勧誘ができますので、若い方が来られるよりうれしいのです。保険セールス的にはもう対象とならない年齢ですが。
銀行等金融機関の商品構成は、定期預金をはじめ、預け入れ期間が保険会社と比して短期、中期の商品が多いため、退職金というまとまったお金が入ることの多い定年前後(=年金受給開始前後)世代は客層として非常に魅力的です。住宅ローンの返済その他得意分野の相談が可能なことも多いでしょう。
保険会社の場合
次に保険セールスの場合ですが、年金相談によって営業をする客層は金融機関とちょっと異なります。
年金を受け取り始める60歳を過ぎてから加入できる保険もありますが、販売対象として考える場合、特に大型の保障の場合には、定年前後世代より若い年齢層がターゲットでしょう。一般的なライフサイクルから考えても定年前後より若い年代が望ましいです。すでに保障の必要が少なくなった高年齢層より現役バリバリの年齢層のほうがそのニーズが高いに決まっています。
また、老後の生活資金の面から考えても、積み立ててまとまった額になるためにはある程度の期間を要しますから、年金保険などで準備をするにしても40歳代くらいからスタートすることを検討、お勧めしないといけません。
大まかな分け方ですが、公的年金をツールとしたビジネスは、銀行等の金融機関は60歳前後をターゲットとし、保険会社は30、40、50歳代がターゲットという感じでしょうか。銀行、証券、保険という垣根がどんどん低くなってきましたが、こと公的年金を使ってのビジネスに関しては、やはりちょっと差があるようです。
銀行も虎視眈々と狙っている
銀行の方と話をしたとき、「現在の口座獲得のための年金相談ビジネスは将来頭打ちになることが予想され、ライフコンサルティングを充実発展させていくことを考えると、もっと若い層にターゲットを絞った年金関連商品なども品揃えし販売していかないといけない」ということを聞きました。また実際に金融機関の営業担当者から、「個人年金を売るにはどうしたらいいのでしょうか?」という質問を受けたこともあります。
本来長期にわたるライフプランニング分野は保険会社が最も得意な分野なのですからそう簡単に負けるわけにはいきません。
しかし、“年金といえば銀行をはじめとする金融機関の年金相談”という流れがある程度できてしまった現在、その発展形として金融機関から年金商品の販売に攻勢を掛けられることも十分考えられます。
2009.06.01
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執筆者:桶谷 浩
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[経歴・バックグラウンド]
大学卒業後、生命保険会社に勤務その後退職し、学習塾等に勤務
2001年社会保険労務士として独立開業
2002年FP登録(AFP、後CFPに)
現在、公的年金を中心に据え、成年後見・介護制度を併せて、広く老後の生活設計を考えるというテーマで、相談業務、講演、執筆など活動中。
2007年4月に合同会社電脳年金を立ち上げ。
[保有資格]
社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(CFP)、行政書士
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