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知ってビックリ!年金のはなし
第67回 保険セールスのための年金(3)
 
細かい数字、大まかな数字
  普段年金相談をしている場合、1円にこだわる場合とこだわらない場合があります。年金の手続の局面では、お客さまによって、計算式と実際の送付額に円単位の違いがあるような細かいことを気にされる方もいます。
  例えば、年金額がジャスト100万円と通知が来た場合、それを2、4、6、8、10、12月に受取るわけですから、6で割ることとなり必ず端数が生じます。その端数をどう処理しているか。気になる人はとても気になるようです(答えは、1回の支払分で円未満を切り捨てしているので、1年トータルでみるとジャスト100万円を僅かに下回ることとなります)。
銀行をはじめとする金融機関と保険会社のこだわり
  以前にも触れましたが、金融機関が行う年金ビジネスでは、支給の手続のご案内やお手伝いをする関係上、端数処理のような細かいことについても、ある程度の知識を持ったほうがよいということになります。

  ところが、保険セールスにおいては、そんな細かい知識は必要としません。将来何かあった場合に公的保障はいくらで、それが不足するから、上積みとして保険あるいは個人年金に入るということを考えてお客さまに提供するわけですから、将来の年金額について1円にこだわる必要は全くないわけです。逆に、こだわるべきではないかもしれません。
こだわりはマイナス
  仕事柄、生命保険会社の公的年金に関する営業ツールをいろいろと見せてもらったりしますが、気になるのは、この「円単位」を基準としたような細かい年金額を使ったツールが多く存在することです。それ自体間違いではないですし、正確性を期するという点では良いことかもしれませんが、どうしてもインパクトに欠けてしまいます。
  例えば、国民年金は40年加入で現在の満額は792,100円ですが、年金相談でこの額の話しをすると、多くのお客さんは帰宅途中でこの数字を忘れてしまいます。非常に細かすぎるわけです。
  単純に1年かけて2万円、40年で80万円、80万円は月額に直すと6.6万円の年金。こちらのほうが平易で頭の中に残りやすいのです。 実際に年金をもらっている人は別として、受給までに時間がある場合には実際の年金相談の場では、このアバウト方式を使う場合が大半です。

  印刷物については、法律や監督官庁の縛りもあり、アバウトな数字を使うことが問題になることも多いかもしれません。しかし、募集人側の知識としても、大枠で数字を捉えるほうが自分自身も理解しやすく誤解なく説明できるわけで、現場で公的年金をきっかけとした保険営業をされている方は「アバウトな数字」を使って説明している方が多いかと思います。
アバウトなほうが勉強が楽です
  金融機関の年金研修では、「最低でも国民年金の計算方法を理解できるようにしてください」と講師が頼まれることもよくあるそうです。正確性を期すためにはやはり時間をたっぷりかけて教えていかなければなりません。
  しかし、アバウトな数字を使って年金をトータルに説明する技術を学ぶだけであれば、年金を学ぶ時間も相当に短縮できます。しかも現場で使えるようになり効果は抜群です。
  最初から細かい数字にこだわると、何が何だかわからなくなり、年金なんか嫌だと放り出してしまいがちですが、細かい数字にこだわらない方法であれば、最初のとっつきにくさもクリアできます。
  公的年金は細部まで覚えていなくても、全体像を知るだけで営業の強い味方となり得るものですから、もっと社員教育に力を入れてほしいと思うのですが。
2009.07.06
執筆者:桶谷 浩
[経歴・バックグラウンド]
大学卒業後、生命保険会社に勤務その後退職し、学習塾等に勤務
2001年社会保険労務士として独立開業
2002年FP登録(AFP、後CFPに)
現在、公的年金を中心に据え、成年後見・介護制度を併せて、広く老後の生活設計を考えるというテーマで、相談業務、講演、執筆など活動中。

2007年4月に合同会社電脳年金を立ち上げ。
[保有資格]
社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(CFP)、行政書士
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