第68回 遅い、遅い、遅すぎます
最近多発するクレーム
昨年のねんきん特別便。
たくさんの方が、「俺が勤めていた期間の記録」がないからと、返信をされました。社会保険事務所に直接出向かれた方もいらっしゃいます。そんな方からの不満を最近年金相談でよく耳にします。
もう1年も経っているのだけれど返事が来ない
昨年の3月までに、記録漏れの疑いがある人にねんきん特別便がまず送付され、次いで疑わしい記録のない人に送られました。そんなわけで、昨年の4月から最近までの年金相談は、特別便がらみの質問ラッシュでした。社会保険事務所も大混雑だったようです。
われわれ相談を受ける側も、ちょっとでも疑わしい人には、ご自身の安心のためにすべてその記録を書いて送り返すように助言しました。
それに従って送り返した人の中で、2009年6月時点でまだ何も回答が来ない状態の人が多数いらっしゃるのです。
実際に、「時間がかかりますよ」という話はその場でさせていただいたのですけれど、まさかここまで回答が遅れるとは思いませんでした。
80歳を過ぎた高齢の方などは特に心配されており、こちらに何度も電話をかけていらっしゃるケースもあります。これについては「イエス、ノーの回答は必ず来ますからそれまで待ちましょう」と励ますしかありません。「自分の寿命が…」と言われると大変心苦しいのですけれど。
振込も遅れています
社会保険事務所で、漏れた記録の統合の手続をされた方の未払分の振込もとても遅れています。実際に社会保険事務所に昨年の春に相談に行かれ記録の訂正をされ、その場で「半年後、今年(今から見ると去年)の秋ごろに振り込まれます」という社会保険事務所の窓口の説明を信じて、今も振込を待ち続けている人もいました。社会保険事務所側も半年程度で処理できると考えていたようです。
ところが、実際にお金が振り込まれてきたのは何と4月になってからと大幅に遅れています。
社会保険事務所の職員ではないので、どのような理由でこれだけ遅延しているのかはわかりませんが、「当時窓口でした説明」と「実際」がずいぶんと違っています。
事情はいろいろとあるとは思いますが、「手続がずさんでした」「記録を直します」「直したら振り込みます」「でもその振込みがその時点での説明より半年も遅れました」というのであれば、「いったい何をしているんだ、本当に反省しているのか」と記録訂正をされた方が怒りたくなる気持もわかります。
未処理もあります
それ以外にも、ねんきん特別便で「年金記録に漏れがあります」という書面を受け取り、社会保険事務所に連絡をして、「その期間は確かに漏れているが、一時金として全額貰っているので年金額には関係ない」という説明があり、残念だが話にケリがついたとお思いのお客さまがいました。
ところが、この方に今年の4月から送付されている「ねんきん定期便」が「疑わしい記録のある人に送られるオレンジの封筒」で来たのです。
あわてて私が社会保険事務所に問い合わせると、「特別便でケリがついていたと思っていた期間」が記録統合されておらず、定期便に反映されていないためにオレンジ色の封筒で来てしまったようでした。本人と社会保険事務所の間でどんなやり取りあったかわかりませんが、せっかくの申出後の事務処理もいろいろと漏れや不備があるようです。またこれも年金不信の原因となります。
本当に大丈夫なのでしょうか?
正直、事務量にマンパワーが追いついていない気がするのですが、そんな大混乱の中で、年金事務を2010年に日本年金機構に移行する作業が進められています。
将来的はそういう移管があってもいいのですが、こんな大混乱のさなかにそんなことをしてさらに事務が混乱しないのでしょうか。全く事務内容が変わらなくても、所属や所管が変わると事務が滞ったりすることもよくある話です。さらなる遅延が発生してしまわないかと本当に心配です。
2009.07.06
|
執筆者:桶谷 浩
|
[経歴・バックグラウンド]
大学卒業後、生命保険会社に勤務その後退職し、学習塾等に勤務
2001年社会保険労務士として独立開業
2002年FP登録(AFP、後CFPに)
現在、公的年金を中心に据え、成年後見・介護制度を併せて、広く老後の生活設計を考えるというテーマで、相談業務、講演、執筆など活動中。
2007年4月に合同会社電脳年金を立ち上げ。
[保有資格]
社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(CFP)、行政書士
|
|
|
|