第69回 何のために年金の裁定手続きをするのか?
障害年金を受給中の方が相談に来られた
先日相談会にお越しのお客さま(女性)は、ご主人が障害者で、現在障害2級の年金を受給中の方でした。ご主人がもうすぐ60歳になられるということで、その女性は相談に来られたのです。
ご存じのとおり、60歳になって老後の年金の権利が発生するとしても、両方の年金はもらえません。障害年金と老齢年金はいずれか多いほうの選択になります。この方は障害厚生年金もあり2級の障害年金のほうが多く、そちらを受給されるケースでした。
どうして手続をしないといけないのか?
60歳からの年金は選択ですが、この方が65歳になって国民年金が受け取れる場合にも、障害年金と老齢年金の選択という問題はついて回ります。この方の年金見込額等を確認するとやはり「障害基礎年金プラス障害厚生年金」のほうが多く、老齢年金はもらわないだろうという予測になりました。つまりこれから亡くなるまでずっと障害年金をもらわれるだろう方なのです。
しかしこういう方にも、厚生年金に加入されていた期間がある場合には例外なく、60歳の3カ月前に老齢年金の裁定請求書が送られてきます。当然その中には、「年金の手続きをしてください」と書かれており、手続き書類が同封されているわけです。
そこで、「何のために老後の年金の裁定請求をするの?」という疑問がわいてきます。今後受け取ることがないと思われる年金の手続きをするのは、手間ヒマを掛けるだけで無駄ではないのか…、と。
その通りではあるのですが
たしかに手続きをする意味があまり感じられないのは事実です。
ただいえるのは、「症状が回復して、2級より軽い症状になった場合、障害基礎年金はもらえなくなりますから、老齢基礎年金をもらわざるを得ない。その場合、手続きが終わっているとその切り替えがスムーズになるのは確かです。もし手続きをしていないと、病状が回復を見せた場合、イチから年金の手続きをしないといけないことになり、受給開始まである程度の時間を要することになりますよ」ということです。
説明しても割り切れないところが…
そのように説明しても、奥さまは疑問を抱いたままでした。「うちの夫の病気は、まず回復することはないんだけれどなあ」と。
それ以上のことは深く尋ねませんでしたが、確かに回復が見込めないと思われている方に「症状が軽くなったら」という説明ではちょっと説得力に欠けるところがあります。ただし、将来のことはわかりません。
老齢の年金と障害の年金は同一人に重なって発生してもそれぞれが別物(別手続き)だということは理屈のうえでは理解できても、一般の人にはしっくりとこないところです。 しかし、老後の年金の権利が発生している以上、緑の封筒で「手続用紙」は送られてきます。
一見無駄のように思えてしまう手続きであっても、裁定請求をすることを強くお勧めしました。というのは、次のようなケースがあったからです。
(第70回に続きます)
2009.08.03
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執筆者:桶谷 浩
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[経歴・バックグラウンド]
大学卒業後、生命保険会社に勤務その後退職し、学習塾等に勤務
2001年社会保険労務士として独立開業
2002年FP登録(AFP、後CFPに)
現在、公的年金を中心に据え、成年後見・介護制度を併せて、広く老後の生活設計を考えるというテーマで、相談業務、講演、執筆など活動中。
2007年4月に合同会社電脳年金を立ち上げ。
[保有資格]
社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(CFP)、行政書士
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