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知ってビックリ!年金のはなし
第74回 厚生年金基金の貰い忘れを防ぐポイント
 
  厚生年金基金の説明は極めて難しいものです。難しいが故に、貰い忘れがとても多いのです。2年前に124万件の手続漏れ(貰い忘れ)といわれた基金ですが、その数は最新では精査されてさらに増えているとのこと、本当に困ったものです。
  一般の人に厚生年金基金を説明するのは大変です。内容を説明してもなかなか分からない方も多いのが実情です。そこで私は、内容の説明は簡略にして結果重視の対応をしています。若干不正確ですが、お客さまに内容を説明するときは、「厚生年金基金とは国が払う本来額の厚生年金から一部分を抜き(支払わず)それに別途に割増をつけて、基金から直接支払うものです。だからきちんとした年金を受取るためには、国と基金とへの2つの手続きが必要です」という言い方で注意喚起をします。
まずは年金の加入記録を確認
  基金の仕組みがよく分からなくても貰い忘れは防げます。ポイントは国から送られてくる「ねんきん定期便」(昨年受け取ったものでも結構です)などの資料において、年金の加入履歴の中の会社で働いていた期間に(厚生年金基金加入期間)という記載があった場合には、必ずチェックし行動を起こす、ということです。
  「何だ、簡単なことだ」と思うことなかれ。実際にはこの(厚生年金基金加入期間)ということの意味がよく分からず、「はて、なんだろう?」と疑問に思いつつそのままにされている(あるいは相談に来られなかったら放置されてしまいそうな)人がとても多いのです。この基金の表示が入るようになったのはここ数年のことで、それ以前は本人に記憶がなければ、あるいは専門家が記録を確認し指摘しなければ、手続きがされず貰い忘れのままで闇に消えていくというのは普通のことでした。その意味では注意喚起というところはずいぶんと進歩しているのですが、どんなに国が貰い忘れを防ごうと注意喚起しても、その意味とその後の対処が分からないと、年金受給者本人を動かすモチベーションにはならず、なんともしがたいのです。
そして電話
  上記のように(厚生年金基金加入期間)があるときは、60歳になる1年前くらいになったら、
 ・ 加入期間が10年を超えていなければ、企業年金連合会へ電話
 ・ 10年を超えていれば、その所属した基金へ電話
をします。所属した基金が分からない場合は、昔の勤務先の総務人事等へ電話して教えてもらう(会社名と基金名が違うこともあります)ことになります。これだけでまずはひと安心です。なお、10年の部分は基金によっては基準が違う場合もあるのですが、よく分からない場合でも2箇所(企業年金連合会および加入していた基金)電話すればよいだけですから面倒がらずに電話してみることが必要です。
  電話をすれば、オペレーターがすぐにコンピューターで記録を確認し、最新の住所と氏名を確認し、企業年金連合会に移管している基金であれば、60歳の誕生日の1カ月前くらいに手続書類を送ってきてくれます。あとは必要事項を書いてそれを送り返すだけです。
金額は少ないものの…
  基金は物価スライドしないために、加入期間が短いと年額(月額ではない)数千円というような少額の年金となることもよくあります。しかし、年金として貰えるものは貰わないと、まことにもったいない。
  ということで、繰り返しになりますが厚生年金基金の最大のポイントは「手続が2つになる=国の年金の請求手続とは別にもう一手間をかける必要がある」ということです。基金の期間があること、この確認も繰り返しますが、厚生年金加入履歴が「ねんきん定期便」の中に記載されているので容易に分かります。
  またすでに受給を開始されている人は、昨年の特別便をもう一度確認されると、基金の加入があるかどうかが分かります。
  わずかの手間で貰い忘れが防げるのですから、(厚生年金基金加入期間)の注記は注意して注意しすぎることはありません。説明すればとても簡単なことなのですが、お客さまはそういう情報をお持ちでないので、情報提供をしてあげるととても喜ばれます。
2009.10.13
執筆者:桶谷 浩
[経歴・バックグラウンド]
大学卒業後、生命保険会社に勤務その後退職し、学習塾等に勤務
2001年社会保険労務士として独立開業
2002年FP登録(AFP、後CFPに)
現在、公的年金を中心に据え、成年後見・介護制度を併せて、広く老後の生活設計を考えるというテーマで、相談業務、講演、執筆など活動中。

2007年4月に合同会社電脳年金を立ち上げ。
[保有資格]
社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(CFP)、行政書士
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