第75回 戸籍・住民票を取るだけでもちょっとややこしい
手続には戸籍や住民票が必要なのですが…
年金の手続に関して、戸籍や住民票が必要になる場合があります。夫がサラリーマンで20年以上働き、奥さんが専業主婦であった場合などは、加給年金や振替加算がつきますから、「戸籍謄本」「住民票(世帯全員の記載のあるもの)」「課税・非課税証明書(所得証明書)」の3つ(年金を扱っている人の間では「3点セット」といいます)を持参することになります。単身者などの場合は、住民票コードが分かればそれを裁定請求書に記載することで、戸籍・住民票等は添付不要、と手続案内に書いてありますが、この場合も戸籍(抄本)や住民表(本人の記載のみ)を添付することも現場では普通です。
戸籍1枚でも難しい
年金の請求をするお客さまに、「お手続をする場合に戸籍や住民票をつけてください」もしくは「代わってお手続をする場合に戸籍や住民票をご用意ください」ということを伝える場合、「謄本なのか抄本なのか、両方必要なのか」「(前述のように)住民票コードだけでいいのか」、その辺の判断ももちろん面倒です。しかも話はそれだけでは終わりません。そうやって判断した書類をただご用意くださいというだけでは足りないのです。
無料ですか、有料ですか?
戸籍や住民票を請求する場合、通常われわれは市区役所、町村役場で手数料(大体300円から400円程度)を支払って取得します。ところが、年金の請求手続の場合に限って、市区町村によっては無料にしているところがあります。要するに、日本全国「有料のところ」と「無料のところ」が混在するのです。
住民票が無料で取れるなどというのは普段年金の手続をしないお客さまはご存じではないかもしれません。もし無料で取得できる市区町村であれば、当然年金相談の場でわれわれはそういうことを説明しないといけません。ところが、それが全国の市区町村でまさにまちまちなのです。A市は無料で取得できるけれど、お隣のB市は無料で取得できない。また年金相談を受ける側も、一定のところで動かず相談をしている人と、全国あちこち動き回って相談をしている人がいるのです。前者は、一度自分の行く地域のことを確認しておけば問題なく、無料の場合は「戸籍や住民票を取得するときに「年金の請求に使います」と窓口担当者に申し出てください」と説明できますから話は早いのですが、後者は事前にその地域の役所に聞くか、金融機関の年金担当者に話を聞くという準備が必要になります。
また、その地域の住民の方だけが相談に来られるなら話は早いのですが、場合によっては隣の市の住民だけれど仕事帰りにこちらに来た、ということもあるでしょうから、どこにお住まいかということも聞くことも必要になります。
ただ単に、「戸籍や住民票をご用意ください」と言うだけでは後で「わざわざ年金相談に行ったのだから、きちんと説明してほしかった」というように、わずかなことで好感度が落ちてしまう可能性があります。
なお、この問題については、行政苦情救済推進会議でも取り上げられています。
ダメモトでも申出を
戸籍や住民票を無料にする、しないというのは地方自治体の判断ですし、有料のところと無料のところが混在しているのは仕方がないことです。また、上記の参考リンクでも触れていますが、戸籍謄抄本や住民票は有料だけれど、記載事項証明書なら無料というところもあり、さらに最近では年金記録問題に関連し、年金の請求手続に使うのは有料だけれど、年金記録確認等に関連書類として使う場合は無料という取り扱いをする自治体もあるようで、まさにばらばらの状態です。
要するによく分からないのですから、ダメモトで「年金の請求に使うのだけれど無料になりませんか?」と窓口で聞いてみるのが一番のようです。とはいうものの、一生に一度の手続ですから話を聞いても忘れてしまいそうなことなのですが。
添付書類1つ取得するだけでもなかなか面倒なものです。
2009.11.02
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執筆者:桶谷 浩
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[経歴・バックグラウンド]
大学卒業後、生命保険会社に勤務その後退職し、学習塾等に勤務
2001年社会保険労務士として独立開業
2002年FP登録(AFP、後CFPに)
現在、公的年金を中心に据え、成年後見・介護制度を併せて、広く老後の生活設計を考えるというテーマで、相談業務、講演、執筆など活動中。
2007年4月に合同会社電脳年金を立ち上げ。
[保有資格]
社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(CFP)、行政書士
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