>  知ってビックリ!年金のはなし >  第76回 えっ、今から結婚ですか?
知ってビックリ!年金のはなし
第76回 えっ、今から結婚ですか?
 
「えっ!」と驚く相談
  年金相談をしていると、時々こちらが想定をしていないお客さまがいらっしゃることがあり、驚かされます。先日もそうでした。

  相談にいらっしゃったのは60代後半の男性、すでに年金をお受取りの方でした。そこで相談されたのは、「今度結婚するんだけれど、妻の遺族年金はどうなるの?」ということでした。
  遺族年金というのは、みなさんの関心の的で、よく質問を受けます。ただし、多くの場合は若いころに結婚、その後60歳で年金の権利が発生となりますので、年金受給の権利発生後に結婚というパターンのご相談はめったにありません。しかも追い打ちがきます。「妻は外国人なんだけれど、どうなの?」
外国人であることは問題ない
  日本の年金制度では、基本的に「日本人」と「外国人」を区別していません。(脱退一時金という、外国人が日本を去る場合の一時金での精算制度等を除いて)日本人だから、外国人だからという違いはありません。ただし実態としては、外国人について(帰化や永住権のある人以外は)老後の年金を貰うときには、必要な25年の加入期間の確認が手間だったりすることはあるかとは思います(加入期間が短いため)。しかし、今回の相談は老後の年金ではなく遺族年金の話です。遺族年金に関しては「夫の死亡時の妻」というのが必要条件で、妻が老後の年金を貰っているか否かということは問題にはなりません。ただし老後の妻の国民年金がないと、夫が死亡した後、妻自身の老後の国民年金に夫の遺族厚生年金が乗るという、元サラリーマンの夫が先立った場合の妻の年金パターンになりませんので年金額は少ないでしょう。

  額の問題はあれ、遺族年金を貰うことについて、外国人であることは問題にはなりません。
遺族年金が貰えるか貰えないか
  さて本題。年金をすでに貰い始めている60代後半の方が結婚した場合に、遺族年金を貰えるか貰えないかですが、結論を先に言うと貰えます。

  法律では、遺族厚生年金は、「老齢厚生年金の受給権者、または老齢厚生年金を受けるに必要な資格期間を満たしているものが死亡したとき」に貰えるとなっており、妻であること、その妻が亡くなった夫に生計維持をされていれば年金が貰えることになります。

  今はこのようにきちんと書いていますが、相談を受けた時点では即答したものの、実は後から心の中で少しだけ不安が生じてきました。「本当にあれで大丈夫だったのかな?」と。後で念のため本を開いて大丈夫だと確認したのが正直な話で、普段あまり目にしないレアケースの場合、不意打ちを食らったようになり判断が鈍ります。

  年金相談では、基本的にお客さまをお待たせしません。即答が原則です。パラパラと資料や本をめくって数字を確認する程度のことはしますが、1、2分程度以上お客さまを待たせる調べ物は目の前ではしません(これをやると非常に印象が悪くなります)。即答ができない場合は後日確認の上での回答となります。今回の場合は、念のために後日回答でもよかったわけで、自分が即答したのは正しい判断だったかというところも反省材料ではあります。
年金は貰えますが…
  さらにこの方は、前妻が昨年亡くなったということで、その加給年金が停止されて云々、ということで相談は続きます。長くなるので止めますが、遺族年金に関しては「夫が死ぬまでに妻となったもの」であれば貰えるということを押さえておけば良いでしょう。最近は熟年結婚も増えているようですし。

  であれば、80歳になっても90歳になってもその気になれば結婚すれば良い? いや年金的にはまさにそうですが、遺産相続の話がややこしくなったりしますし、心理的な抵抗感がありますからそこまで踏み切れない方が普通だと思います。

  しかし、元気な方もいらっしゃるのですね。
2009.11.02
執筆者:桶谷 浩
[経歴・バックグラウンド]
大学卒業後、生命保険会社に勤務その後退職し、学習塾等に勤務
2001年社会保険労務士として独立開業
2002年FP登録(AFP、後CFPに)
現在、公的年金を中心に据え、成年後見・介護制度を併せて、広く老後の生活設計を考えるというテーマで、相談業務、講演、執筆など活動中。

2007年4月に合同会社電脳年金を立ち上げ。
[保有資格]
社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(CFP)、行政書士
  ページトップへ