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知ってビックリ!年金のはなし
第83回 請求日1日の違いで6万円
 
障害年金のおさらい
  私たちが病気やけがによる後遺症などの状態となった場合、障害年金が支給されるのはご存じだと思います。そして、初診日に会社に勤めていたら障害厚生年金(障害等級1、2級の場合は障害基礎年金も併せて)が、自営業、専業主婦、学生等であった場合は障害基礎年金が支給されるということも基本的なことでご存じのことと思います。

  さて、その障害年金の請求ですが、「事後重症」という仕組みはご存じでしょうか?
  通常の障害の場合は初診日から原則1年6カ月後の障害認定日を基準として支給されます。このときの障害状態で、障害年金が支給されるか否かが決められるのです。
  ところが、病気やけがの症状というのは変化していきます。1年6カ月後はまだそんなに大したことがなかったけれど、その後、急に状態が悪化した。そういうことも普通に起こり得ます。そのような場合は、1年6カ月の基準では障害年金を受けられませんが、その重くなった後の障害状態を基準として障害年金を受給することができます。これが「事後重症」の制度です。
認定日から年金が貰える場合と、請求のときから年金が貰える場合
  障害認定日の病状を基準に判断する原則的な障害年金と事後重症の場合とで年金額が変わることはありませんが、明白に違うことがあります。それはいつから年金が貰えるかということです。
  障害認定日を基準とする請求の場合、1年6カ月後の障害認定日が基準となります。何かの都合で手続きが遅れて、3年後になってしまった。そんな場合も手続きをすると障害認定日にさかのぼって1年半の年金が支給されます(当然、1年半前時点の診断書を添付することになります。また、5年の時効はありますので、大きく遅れて5年を超える場合はその超えた部分の年金は時効により貰うことはできません)。

  ところが認定日の請求は、請求をした日の属する月から後に支給されることになります。認定日を基準にした場合と異なりさかのぼりがありません。1カ月遅れればその分貰えないということです。請求のタイミングはなかなか難しいですが、「この程度なら年金が支給されるかもしれない」という状態まで病状が悪化した場合は、医師の意見を聞き早めに請求をしたほうがいいということになります。
1日違いで66,000円
  先日お話をうかがったお客さまは、まさにそんな方でした。
  聞けば、昔からの持病が悪化し、医師から「そろそろ障害年金を請求しても大丈夫かもしれない」というお話をされたのです。
  そこで、手続き書類を12月1日に社会保険事務所(昨年なのでまだ年金事務所ではありませんでした)にお持ちになったということ。
  それを聞いて一瞬、「えっ!」と思いました。
  前述したとおり、事後重症の場合は「請求したときが基準」になります。そして年金は月単位で支給される。日割りはありません。
  ということはどういうことでしょう。12月1日に提出されたのであれば、12月が請求をした月になります。ところが、1日だけ早く、11月30日に請求書類を出していれば、11月が請求をした月になります。
  この方は、まだ結果は出ていませんが、もし「障害2級に該当」していたとしたら、障害基礎年金は年額792,100円で、月額にすると66,000円(百円以下、四捨五入)です。つまり1日早く提出していれば、年金が66,000円多く貰えたかもしれないのです。
  もちろん、請求書類を提出済みのお客さまにこんなことを言ってもはじまりませんので何も触れませんでしたが、心の中では「もったいないな」と思いました。
わずかな違いで損得が起きてしまうのが年金
  年金請求は、急ぐものと急ぐ必要のないものがあります。急ぐ場合は、「急いで」とお客さまをせき立てることになります。
  また、本来急がないものでも、場合によっては急ぐことになるケースもあります。老後の年金、たまにですが貰えるのに放置して、もう5年を超えているという方がいらっしゃいます。その場合は、毎月毎月時効が生じて損をしているわけですから、とにかく手続きを急がないといけない。
  そして時期が月末であったりすると、その月のうちに手続きを終わらせたいということになりますから大変です。月末にわれわれが大慌てをしているときは、そういうケースなんですよね。
2010.03.08
執筆者:桶谷 浩
[経歴・バックグラウンド]
大学卒業後、生命保険会社に勤務その後退職し、学習塾等に勤務
2001年社会保険労務士として独立開業
2002年FP登録(AFP、後CFPに)
現在、公的年金を中心に据え、成年後見・介護制度を併せて、広く老後の生活設計を考えるというテーマで、相談業務、講演、執筆など活動中。

2007年4月に合同会社電脳年金を立ち上げ。
[保有資格]
社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(CFP)、行政書士
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