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知ってビックリ!年金のはなし
第84回 リストラをされてしまった場合の国民年金保険料
 
会社をリストラされてしまった
  先日ご相談を受けた方です。
  年齢はもうすぐ59歳。定年まではまだちょっと時間があります。
  ところが、ご本人は会社を「今年の3月末で辞める」とおっしゃる。正確には「辞めさせられる」ということでしょうか、会社が非常に危機的状態で、頼むから早期退職をしてくれ、そうしないと会社が持たない、と会社の経営者から説得されたのだとのこと。
  本人は納得がいかないので散々渋ったけれど、結局は受け入れざるを得なくなってしまったそうです。
  それからは年金相談というより、労働相談のように会社との交渉の話、雇用保険の話と、あちこちに話が飛んでしまいました。
苦しくともできれば保険料を納付するのがベストですが
  この不景気のご時世。
  会社を辞めるのはいいけれど、次の仕事が見つかるか否かは霧の中、全くわかりません。運よく次の職場が今年の3月末までに見つかれば問題はありません。しかしそうでないと、ちょっと困ります。50歳代は、よほど老後の蓄えがある場合を除いて、引退するには労働意欲的にも経済的にも少し早い年齢ですよね。
  さて、この場合の年金関係はどうなるでしょうか? 年金相談は、仕事が見つからない場合の検討に移りました。
  仕事上の経験からですが、年金に関して言えば、若いころに生活が厳しくて保険料を納めなかったりすることが老後の生活に響くということは痛感していました。生活が大変だから年金保険料の免除をしてもらう。それはそれで仕方がないことですが、免除をされた場合は老後の年金額がかなり少なくなります。例えば10年間保険料免除となった場合、その期間に対応する年金は年間10万円にしかなりません。40年で40万円、きちんと納めた人の半分にしかならないのです。ただこれも国庫負担の増額で支給額が良くなったので、以前(国庫負担3分の1)のころは10年で貰える年金額は年間6.6万円ほどにしかなりませんでした。やはり国民年金は、できれば納付するのがベストなのです。
年金は生き物のように変わっていく
  そんな免除でも前述のように、免除の期間は全く年金に結びつかないのではなく、期間に応じて年金が支給されるのですから、納付と免除で比較するのではなく、免除と未納で比較すれば、ずいぶんと老後の生活の状況が違ってきます。上記のように免除だと10年で10万、40年で40万円にしかなりませんが、未納であればゼロ円なのです。未納はさらに、場合によっては年金の受給に必要な25年の納付等期間にも影響することも考えられます。
会社をリストラされてしまった
  さて、会社を辞め、次の働き先がないときに国民年金に加入した場合ですが、国民年金の免除制度は本来前年の所得によって保険料の免除の可否が決まるのが原則です。
  ですから、急にリストラにあったような場合、上記の人のように急に解雇をされたようなケース等では、前年の収入は普通のサラリーマンと同じだけあるので手続きをしても、免除が認められることはありません。

  しかし、退職者に対する免除特例を申し出れば状況は変わります。退職のケースでは、前年の所得があっても、現在仕事がないことにより、免除が認められるのです。
  同時に配偶者にも免除が認められますから、夫だけでなくサラリーマンの妻(第3号被保険者)だった妻の免除も同時に認められます。

  リストラにあっても、必ずやってくる老後のために保険料をきちんと納付をするのがベストですが、もし金銭的に厳しいならばぜひ利用することをお勧めする制度です。これを知らないで、生活が厳しいからと、故意に保険料を納付せず未納滞納にしてしまうというのは最悪の選択です。

  年金は、こういう仕組みを知らないでいると本当に損をしてしまいます。
2010.03.08
執筆者:桶谷 浩
[経歴・バックグラウンド]
大学卒業後、生命保険会社に勤務その後退職し、学習塾等に勤務
2001年社会保険労務士として独立開業
2002年FP登録(AFP、後CFPに)
現在、公的年金を中心に据え、成年後見・介護制度を併せて、広く老後の生活設計を考えるというテーマで、相談業務、講演、執筆など活動中。

2007年4月に合同会社電脳年金を立ち上げ。
[保有資格]
社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(CFP)、行政書士
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