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知ってビックリ!年金のはなし
第87回 在職老齢年金の調整額が変更になりました(1)
 
平成22年3月までは
  60歳を過ぎて、会社に勤めながら年金を受給される方は、報酬(給与・賞与)額に応じて年金額が調整(停止・一部停止)されることはご存じかと思います。「在職老齢年金の支給停止」といいます。
  平成22年3月までは、調整額は60〜64歳の方については、報酬(標準報酬月額相当額=ほぼ給与と賞与直近1年分の12分の1、以下同じ)+年金額(基本月額=加給年金を除く特別支給の老齢厚生年金)の合計が28万円を超えると支給の調整が始まるという説明でした。
  また65歳以降の方については、報酬(標準報酬月額相当額)+年金額(基本月額=報酬比例部分の月額)の合計が48万円を超えると支給調整が始まるという説明でした。
平成22年4月からは(1)…60〜64歳の人
  まず、60〜64歳の方の年金はどうなるのでしょうか? こちらから見ていきましょう。

  第一に調整が開始される給与・賞与(基本月額)には変わりがないということはご理解ください。調整を開始されるのが給与(賞与の12分の1)+年金=28万円というところには変更がありません。20万円の給与(賞与なし)8万円の年金月額、という方は平成22年3月までも平成22年4月以降も相変わらず全額支給されることになります。

  それでは、支給停止調整基準額(これを超えた場合は支給停止の計算方法が変わる、境界線の額)が、今まで48万円だったのが47万円に変わったのはどういう意味があるのでしょう?
  ここを説明しようとして悩みました。実際問題としての事例があまりなさそうなのです。
  現在新規に年金を受けられる予定の方(昭和25年生まれ)では、定額部分は支給されず、65歳になるまでの特別支給の老齢厚生年金は報酬比例部分のみを貰うことになります。ここは金額的にはそう多くなく、例えば入社から退職まで40万円の平均給与(平均標準報酬(月)額、かつ賞与3.6カ月)で勤続40年間だったとしてもおおよそ12万円(月額)くらいの年金にしかなりません。

  60歳台前半の在職老齢の停止額は、前述の「報酬+年金額」の合計額が47万円の基準額に達する前に支給停止になっているのです。具体例をあげると、
特別支給の老齢厚生年金が 8万円 標準報酬が 36万円 を超えると全額停止
10万円 38万円
12万円 40万円
14万円 42万円
(※特別支給の老齢厚生年金は加給を含まない基本月額)
  という基準です。一見して受け取る報酬(総報酬月額相当額)48万円の基準が47万円になろうがなるまいが、そのはるか手前である38万円とか40万円とかですでに全額停止が確定してしまい、今回の変更は関係ないのが読み取れます。
かなり非現実的です
  数字を追っていくと、やっと基本月額(=加給年金を含まない報酬比例部分)が19万円で報酬(標準報酬月額相当額)月額が47万円を超えると全額停止という今回の変更の影響がでてくるエリアに入ります。
  ところがこの年金19万円という数字は前述の通り平均40万円の給与で40年働いても12万円にならないところからして、やはりかなり非現実的。だから「今回の変更はあまり影響ありません」と言ってよいでしょう。

  ただし今、既に定額部分を貰っている方(例えば昭和21年4月生まれ、現在64歳で定額+報酬比例部分の年金を受給中というような方)は定額部分を受給しているため、基本月額が19万円を超える可能性があり、そういう方だけ例外的に今回の基準変更が影響を及ぼすことになります。しかしこの方たちも給与が47万円というのはクリアできない場合が多く、該当者にはめったにお目にかかれそうにありません。
2010.05.24
執筆者:桶谷 浩
[経歴・バックグラウンド]
大学卒業後、生命保険会社に勤務その後退職し、学習塾等に勤務
2001年社会保険労務士として独立開業
2002年FP登録(AFP、後CFPに)
現在、公的年金を中心に据え、成年後見・介護制度を併せて、広く老後の生活設計を考えるというテーマで、相談業務、講演、執筆など活動中。

2007年4月に合同会社電脳年金を立ち上げ。
[保有資格]
社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(CFP)、行政書士
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