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知ってビックリ!年金のはなし
第91回 障害年金の受給者の加算の仕組みが変わります
 
障害年金の加給・加算の仕組みが変わります
  人が重い病気やけがをしたときに支給される障害年金。障害状態になると仕事で収入を得ることが難しくなるため、とても大切なものです。
  この傷害年金を受給している人で、配偶者または子がある人には加給もしくは加算として年金の上積みがあるというのはご存じのことと思います。
  国民年金(障害基礎年金)では、18歳到達年度の末日(通常は高校卒業時)まで、1人目、2人目の子には227,900円、3人目から75,900円が障害年金に加算し支給されます。
  厚生年金(障害厚生年金)では、65歳未満の配偶者がいる場合、227,900円の加給年金が加算されます。
  ただしこれまでは、「権利を取得した当時に生計維持をしていたもの」に限られました。つまり、障害年金を貰い始める前に生まれたあるいは結婚した子や配偶者である必要がありました。
具体的にはこう変わります
  今回の年金法改正でこれが改められました(施行は平成22年10月1日)。
  障害状態になって年金を貰いはじめ、しばらくたってから生まれてきた子どもや、その後に結婚した配偶者であっても、その加給の対象となります。
  障害者のご夫婦で子どもが1人いた場合、本体の年金に加算される額は227,900円ですが、その後に子どもが生まれたら、227,900円×2=455,800円が障害基礎年金に上乗せされて支給されることになります。
  独身で障害厚生年金を受けている方が結婚した場合、227,900円の加給年金が障害厚生年金に上乗せされて(ただし加給年金は3級の障害厚生年金にはありません)支給されることになります。

  障害をお持ちといってもその程度や置かれた状況は千差万別で、子どもを産み育てることができる方も当然、いらっしゃいます。ですから、確かに「今までの年金制度は、障害者は障害になった以降は子どもをもうけたり、結婚したりすることを前提としていない」と批判されるのは一理あることで、今回の年金制度の改正は非常にいい方向に向かったものと言うことができるでしょう。
手放しで喜んで良いのか
  この年金法の改正で新たに7万人の方が加算の対象となるということです。障害年金の受給者が平成17年現在で約170万人、現在は180万人を超えるといわれていますが、その4%くらいの方が該当することになります。
  この改正は非常に喜ばしいことなのですが、さて問題はこれがちゃんと実施されるかということです。実務的にはそこがとても気になります。
手続漏れが心配です
  障害年金の相談の際、民間の年金相談でも年金事務所の相談でも、「家族構成」のことは必ず聞きます。子どもや配偶者がいたら年金額が変わるのですから当然のことです。
  実際の手続時にも、「戸籍、住民票」の提出時点でチェックがかかります。戸籍抄本で本人の表示しかない戸籍を持っていったならば、「あなた本当に独身ですか? 配偶者はいらっしゃいませんか?」という念押しの質問がたぶんあるでしょう。
  ですから障害状態になったときの、例えば子の加算の漏れというのはあまりないと考えられます。
  ところが、今回の改正は、「年金が貰えるようになった後に結婚したり子どもができたり」したら額を変えるということです。年金事務所(日本年金機構)は、当然ながら各家庭の家族構成なんて把握していません。実際にこのような方々をいかに把握するのかはわかりませんが、該当する人は何らかの「届出」をする必要があるのでしょう。届出をするためには、「結婚したら」「子どもが生まれたら」年金が増えるんだという知識を受給者が持っているか、それを教えてくれる人がそばにいるという必要があります。
  そうでないと、「届出漏れ」の心配が出てきます。障害年金に限らず年金一般に、「貰えるけれど手続していない」というケースが現状でも加給年金等に関しては結構ありますのでちょっと心配です。
  法律で定めても実際にそれで救われなければ意味がありません。今後うまく運用されていけば良いのですが。
2010.07.12
執筆者:桶谷 浩
[経歴・バックグラウンド]
大学卒業後、生命保険会社に勤務その後退職し、学習塾等に勤務
2001年社会保険労務士として独立開業
2002年FP登録(AFP、後CFPに)
現在、公的年金を中心に据え、成年後見・介護制度を併せて、広く老後の生活設計を考えるというテーマで、相談業務、講演、執筆など活動中。

2007年4月に合同会社電脳年金を立ち上げ。
[保有資格]
社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(CFP)、行政書士
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