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知ってビックリ!年金のはなし
第95回 年金の用語の分かりやすい事例集
 
年金事務所で感じること
  年金事務所に行って相談の順番待ちをしていると、時々相談ブースから相談内容が漏れてくることがあります。
  相談内容は個人情報やプライバシーに関することなので、相談担当者が厳重に注意すべきであり、本来は漏れてはいけないのですが、聞こえてくるものはついつい聞いてしまいます。
  そこで、時々思うのは、「たぶん、今説明を受けている人は、いくら説明をしても分かってもらえないだろうなあ」ということです。そのくらい年金はややこしくて説明しにくいもの。そして理解してもらえない原因にはいくつかの要素があります。
言い換え集ができました
  年金の相談を受けていて、年金が難しいと感じる要素はいくつか考えられます。例を挙げると、
  1 年金を説明する人の未熟さ
  2 言い回しが難しくて分かりにくい
  3 しくみ自体が複雑で平易にできない
  などなどです。
  1は、もうこれはどうしようもありません。相談員ががんばって年金の勉強をして、知識を増やすしかありません。
  そして2についてですが、最近になって日本年金機構はこういうものを公表しています。
  http://www.nenkin.go.jp/new/topics/pdf/0820_02.pdf
  さすがに、年金相談時に用語が分かりにくいという批判が多かったのか、これはとても前向きな作業です。一見してこれなら理解してもらえるだろうという内容も結構含まれており、FPをはじめ読者の方がお客さまに年金を説明する際に使えるものも入っています。今回は読者の方に参考になろうかと思って紹介した次第です。
   例えば  「請求者」 → 年金を受ける方
     「裁定請求」  → 年金を受け取るための請求 などなど
  言われるとそうだなというものがいっぱいあります。
しくみが難しいものはどうしようもない
  しかし、言い換えをすることによって平易にならないもの、しくみ自体が難しいもの、これはもうどうしようもありません。上記の3に属するものであり、言い換え集でも言い換えをしたがために余計に訳が分からなくなってしまっているものがあります。
  例えば「経過的加算」→ 65歳以降の年金が65歳前の年金より少なくならないための加算

  確かに間違いではないのですが、ある程度年金を理解している人からみると、この説明ではさらに分からない人を迷宮に迷わせるのでは? と思われるのではないでしょうか。

  年金機構の言い換えを単純に読むと、「60歳から50万円の年金が、65歳から45万円になるのだから5万円を加算する」、このようなしくみを連想させます。
  しかし現実には、
・60歳からの厚生年金が定額40万円、報酬比例部分50万円
これが、
・65歳になって老齢基礎年金60万円、厚生年金(報酬比例部分50万円、経過的加算2万円)
  といった年金額となる
と通知されるのです。
  そうすると、「一体どこをどのように、少なくならないようにしているの?」「この2万円は一体何?」という疑問がわきます。これを説明し始めるととても大変。
  年金の知識のない方に、経過的加算を20分で納得してもらえるように説明する自信は私にはありません。そもそも経過的加算を誰にでも分かりやすく説明するなんて無理な相談です。
将来に向けて
  日本年金機構の努力は買いますが、年金のしくみ自体が難しいため、分かりやすい用語を使う、言い換えをするといっても限界があります。
  用語の言い換えも大切ですが、それよりも誰にでも年金制度が分かるようにするための年金の仕組みの改正が必要です。実際には難しいでしょうが、こちらも少しでもコツコツとやっていただきたいと、言い換え集を眺めながら思いました。
2010.09.13
執筆者:桶谷 浩
[経歴・バックグラウンド]
大学卒業後、生命保険会社に勤務その後退職し、学習塾等に勤務
2001年社会保険労務士として独立開業
2002年FP登録(AFP、後CFPに)
現在、公的年金を中心に据え、成年後見・介護制度を併せて、広く老後の生活設計を考えるというテーマで、相談業務、講演、執筆など活動中。

2007年4月に合同会社電脳年金を立ち上げ。
[保有資格]
社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(CFP)、行政書士
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