>  平成22年度税制改正大綱 ポイントと解説 >  第7章 検討事項
第7章 検討事項
●  7−1 検討事項
  平成23年度税制改正には直接関係しませんが、来年以後の税制改正に大きく影響することと思われますので、「検討事項」についてもいくつかご紹介しておきます。

1. 納税者権利憲章の制定や税務調査手続の見直しなど納税環境整備に係る諸課題が進展し、その一環としての租税教育の重要性も一層高まる中、税理士の果たすべき役割は今後益々重要になっていくものと考えられます。税理士制度については、平成23 年度中に見直しの必要性や方向性について結論を出すこととされていますが、その見直しに当たっては、税理士を取り巻く状況の変化に的確に対応するとともに、引き続き納税者の利便性の向上を図り、税理士に対する納税者からの信頼をより一層高めるとの観点をも踏まえつつ、関係者等の意見も考慮しながら、検討を進めます。

2. 個人の白色申告者に記帳が義務化されることに伴い、以下の点について今後検討を行います。
(1) 必要経費を概算で控除する租税特別措置のあり方
(2) 正しい記帳を行わない者の必要経費の控除のあり方
(3) 白色申告者の記帳水準が向上した場合における現行の専従者控除について、その専従の実態等を踏まえた見直しのあり方

3. 不服申立手続については、不服申立期間、証拠書類の閲覧・謄写の範囲、対審制、不服申立前置の仕組みのあり方について、内閣府・行政救済制度検討チームの結論を踏まえて改めて検討した上、所要の見直しを図ることとします。また、国税不服審判所については、同チームの検討状況を勘案しつつ、簡易・迅速な行政救済を図るとの観点も踏まえ、審理の中立性・公正性に配意して審判所の所管を含めた組織のあり方や人事のあり方の見直しについて検討を行います。

4. 寄附金控除の年末調整対象化について、源泉徴収義務者の負担や不正行為防止の必要性を踏まえ、源泉徴収義務者等の意見を聴取しつつ、実務的・技術的な観点から実施可能であるかどうかの検討を行います。

5. 山林に関する相続税・贈与税については、減税の効果・減収額や相続税・贈与税が林業経営に及ぼす影響等をまず精査した上で、課税の公平にも留意しつつ、林業家の現状や森林法の改正内容を踏まえ、森林施業の集約化や路網整備の徹底といった政策目的の達成が的確になされる税制上の支援措置について、納税猶予制度を中心に検討し、平成24年度税制改正において必要な見直しを行います。

6. 非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度については、その適用の基礎となる「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」に基づく認定等の運用状況や政策目的等を踏まえ、同制度の活用を促進するための方策や課税の一層の適正化を図る措置について引き続き検討を行います。

7. 相続税の連帯納付義務については、共同相続人による納税義務の履行の実態や租税の徴収確保の観点を踏まえ、そのあり方について幅広く検討を行います。

8. 会計検査院から意見表示がなされている中小企業者に対する法人税率の特例の適用範囲の見直し及び中小企業者に適用される租税特別措置の適用範囲の見直しについては、経済産業省において適用実態を精査した上で、平成24年度税制改正において検討することとします。

9. 非居住者及び外国法人に対する課税原則については、今般のOECDモデル租税条約の改定及び税制調査会専門家委員会による「国際課税に関する論点整理」を踏まえ、様々な産業における実態等を把握しつつ、いわゆる「総合主義」に基づく従来の国内法上の規定を「帰属主義」に沿った規定に見直すとともに、これに応じた適切な課税を確保するために必要な法整備に向け、具体的な検討を行います。

10. 国外資産に関する報告制度など様々な資料情報収集の手続整備に向け、適切な課税・徴収の確保の観点から、具体的な方策について引き続き検討します。

11. 外国との間で租税徴収の共助を行うための仕組みについては、欧州評議会・OECD税務行政執行共助条約などの国際的な取組み等を踏まえつつ、具体的な検討を行います。

12. 生命保険料控除など政策目的へのインセンティブの色彩が強い控除の在り方については、個人住民税の「地域社会の会費」としての性格や地域主権改革の推進等の観点のほか、公的保障の補完としての性格や国民の自助努力の支援等の観点を踏まえ、検討します。

13. 新築住宅等に係る固定資産税の減額措置については、住宅をめぐる状況が地域によって様々であることを踏まえつつ、優良な住宅ストック重視の観点から、平成24年度税制改正までに真摯に議論し、結論を得ます。

14. 観光立国の観点から重要な役割を果たすホテル・旅館の用に供する家屋に係る固定資産評価については、その家屋の使用実態等を把握するとともに、家屋類型間の減価状況のバランスを考慮するための実態調査等を行うなど、できるだけ速やかに検討を行います。

15. 事業税における社会保険診療報酬に係る実質的非課税措置及び医療法人に対する軽減税率については、平成22年度の議論を踏まえつつ、地域医療を確保するために必要な措置について、来年1年間真摯に議論し、結論を得ます。

16. 社会保障・税に関わる番号制度については、「社会保障・税に関わる番号制度に関する実務検討会」での議論と併せ、@法定調書の拡充、A税務当局への提出資料の電子データでの提出の義務付け、B税務行政における電子化の推進と情報連携の効率化、C法定調書への正確な番号記載の確保策、D税務情報についてのプライバシー保護の徹底策等の課題について積極的に検討を行います。
参考
(平成23年度税制改正大綱)
http://www.cao.go.jp/zei-cho/etc/pdf/221216taikou.pdf
(経済産業省)
http://www.meti.go.jp/main/downloadfiles/zeisei23/101216aj.html
(国土交通省)
http://www.mlit.go.jp/common/000131679.pdf
(総務省)
http://www.soumu.go.jp/main_content/000095101.pdf
(農林水産省)
http://www.maff.go.jp/j/press/keiei/tyosei/101216.html
(財務省)
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/syuzei04.htm
(金融庁)
http://www.fsa.go.jp/news/22/singi/20101217-8/01.pdf
(政府税制調査会)
http://www.cao.go.jp/zei-cho/index.html
前のページにもどる
トップへ戻る