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第6章 検討事項
1 検討事項
  平成24年度税制改正には直接関係しませんが、来年以後の税制改正に大きく影響することと思われますので、「検討事項」についてもいくつかご紹介しておきます。
1.国税
  寄附金控除の年末調整対象化について、源泉徴収義務者の負担や不正行為防止の必要性を踏まえ、引き続き実務的・技術的な観点から実施可能であるかどうかの検討を行います。なお、検討に当たっては、源泉徴収義務者等の意見を十分に踏まえる必要があります。
  会計検査院から意見表示がなされている社会保険診療報酬の所得計算の特例に係る租税特別措置の見直しについては、会計検査院から指摘された制度の適用対象となる基準のあり方等に留意しつつ、小規模医療機関の事務処理の負担を軽減するという特例の趣旨に沿ったものとなるよう、課税の公平性の観点を踏まえ、厚生労働省において適用実態を精査した上で、平成25年度税制改正において検討することとします。
  山林に係る相続税・贈与税については、新たに創設される相続税の納税猶予制度の執行及び適用の状況、施業の集約化・路網整備の徹底という政策目的の達成状況等を踏まえ、課税価格の特例制度や贈与税の納税猶予制度等の必要性について検討を行います。
  非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度については、その適用の基礎となる「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」に基づく認定等の運用状況や政策目的等を踏まえ、同制度の活用を促進するための方策や課税の一層の適正化を図る措置について引き続き検討を行います。
  会計検査院から意見表示がなされている中小企業者に対する法人税率の特例の適用範囲の見直し及び中小企業者に適用される租税特別措置の適用範囲の見直しについては、企業の予測可能性にも留意しつつ、所得金額のみならず、各種指標による中小企業者の定義づけの可能性も含めて、そのあり方を引き続き検討することとします。
  非居住者及び外国法人に対する課税原則については、OECDモデル租税条約の改定等を踏まえ、様々な産業における実態や影響等を考慮しつつ、いわゆる「総合主義」に基づく従来の国内法上の規定を「帰属主義」に沿った規定に見直すとともに、これに応じた適切な課税を確保するために必要な法整備に向け、具体的な検討を行います。
図 国際課税原則の見直し
(金融庁「平成24年度税制改正大綱における金融庁関係の主要項目について」P.5)
  税制の抜本的な改革を進めるに当たって、今後とも申告納税制度の円滑かつ適正な運営を確保していくためには、納税者と日常的に関わりを持つ税理士の果たすべき役割は非常に重要なものと考えられます。税理士制度については、税理士の業務や資格取得のあり方などに関し、税理士を取り巻く状況の変化に的確に対応するとともに、税理士の資質の一層の向上など国民・納税者の税理士に対する信頼と納税者利便の向上を図る観点から、関係者等の意見も考慮しながら、その見直しに向けて引き続き検討を進めます。
2.地方税
  生命保険料控除など政策目的へのインセンティブの色彩が強い控除の在り方については、個人住民税の「地域社会の会費」としての性格や地域主権改革の推進等の観点のほか、公的保障の補完としての性格や国民の自助努力の支援等の観点を踏まえ、検討します。
  固定資産税については、住民や企業などの負担感に配意するとともに、地方財政の根幹をなす税目であることや、いわゆるバブル期から現在までの地価の動向等社会経済情勢の変化を踏まえ、その間に実施された土地評価方法の変更や負担軽減措置等の制度改正の点検を行い、平成27年度の評価替えまでに、公平性、合理性、妥当性等の観点から総合的な検討を行います。また、不動産取得税についても、同様の検討を行います。
図 償却資産に対する固定資産税の見直し
(中小企業庁「平成24年度税制改正について(中小企業関係税制)」P.8より)
  新築住宅等に係る固定資産税の減額措置については、住宅ストックが量的に充足している現状を踏まえ、住宅の質の向上を図る政策への転換、適正なコストによる良質な住宅の取得等の住宅政策の観点から、平成26年度税制改正までに、社会経済の情勢を踏まえつつ、他の税目も含めた住宅税制の体系と税制上支援すべき住宅への重点化等そのあり方を検討します。
  事業税における社会保険診療報酬に係る実質的非課税措置については、国民皆保険の中で必要な医療を提供するという観点や税負担の公平を図る観点を考慮した上で、地域医療を確保するために必要な措置について引き続き検討します。事業税における医療法人に対する軽減税率については、税負担の公平を図る観点や、地域医療を確保するために必要な具体的な措置等についてのこれまでの議論を踏まえつつ、平成25年度税制改正において検討することとします。
3.国税・地方税共通
  配偶者控除については、配偶者控除を巡る様々な議論、課税単位の議論、社会経済状況の変化等を踏まえながら、引き続き、抜本的に見直す方向で検討します。
  金融証券税制については、投資リスクの軽減等を通じて一般の投資家が一層投資しやすい環境を整えるため、平成26年に上場株式等の配当・譲渡所得等に係る税率が20%本則税率となることを踏まえ、その前提の下、平成25年度税制改正において、公社債等に対する課税方式の変更及び損益通算範囲の拡大を検討します。
図 金融商品に係る損益通算範囲の拡大
(金融庁「平成24年度税制改正大綱における金融庁関係の主要項目について」P.3より)
  自動車取得税及び自動車重量税については、「廃止、抜本的な見直しを強く求める」等とした平成24年度税制改正における与党の重点要望に沿って、国・地方を通じた関連税制のあり方の見直しを行い、安定的な財源を確保した上で、地方財政にも配慮しつつ、簡素化、負担の軽減、グリーン化の観点から、見直しを行います。
  地球温暖化対策に関する国と地方の役割分担を踏まえ、地方財源を確保・充実する仕組みについて、平成25年度実施に向けた成案を得るべくさらに検討を進めます。
  納税環境の整備については、平成23年度税制改正法附則第106条の趣旨を踏まえ、納税者の利益の保護に資するとともに、税務行政の適正かつ円滑な運営を確保する観点から、引き続き検討を行います。
  社会保障・税に関わる共通番号制度の導入に伴い税務分野において必要となる対応については、「社会保障・税番号大綱」(平成23年6月30日政府・与党社会保障改革検討本部決定)を踏まえ、「番号法案」の具体化を受けて検討を行います。
参 考
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