>  今週のトピックス >  No.1167
新入社員の意識の変化
●  半年間で薄れゆく会社への期待
  昨年、2005年の新入社員に対してビジネスシーンに関する意識調査を紹介したが(本欄「今週のトピックス」1027参照)、今回同じ新入社員に同じ設問で意識調査を行い、入社半年間での回答率の変化をみた調査結果が報告された。同じ質問に対して回答率が大きく変わったものを意識の変化があったとみなすと、半年間で意識が変化している部分とあまり変わっていない部分がみられる。
  意識が変化したとみなされるものは、「職場の飲み会と先約の学生時代の飲み会がぶつかった」場合、「職場の飲み会に出る」が入社直後は61.1%だったが、半年後には47.2%に激減。一方で「友人との飲み会に出る」が38.9%から52.8%と激増している。
  また「業務中にマニュアル以外の事態が発生した」場合は、「できるだけ自分で工夫する」が30.7%から35.2%と高くなり、逆に「先輩・上司に相談する」は69.3%から64.8%と低下している。
  さらに「上司から、会社のためになるが自身の良心に反する手段の仕事を指示された」場合に、「指示通りする」が43.3%から36.6%と減少し、「できる限り避ける」が41.1%から50.0%と高くなっている。
  同様に「職場でコンプライアンス上問題ある事態があるが、上司が動いてくれない」場合、「もうひとつ上の上司に相談する」が49.2%から57.4%へ、「管理部門に相談する」が35.3%から19.5%へ、「分からない」が13.6%から20.5%と変化している。
  これらの意識の変化に共通する要因には、会社に期待するものが薄くなったことがある。「職場で仕事を覚えられる、ビジネススキルを上げられる、上司が導いてくれる」のではなく、「自分を頼りに仕事・スキルを切り開くしかない」ことに半年間で気付いたのだろう。
●  社員の転職志向の根底には、職場や上司の存在が
  こうした気付きが、以下に述べるような意識の変化につながる。「なじめない仕事を続けるのは意味がない」に対して「そう思う」が30.1%から43.7%、「そう思わない」が69.9%から56.3%。「条件の良い会社に移るのが得」に対して「そう思う」が30.4%から42.5%。「若いうちはフリーターも悪くない」に対して、「そう思う」が33.1%から37.8%。「会社の親睦行事には参加したくない」が18.3%から31.3%。「仕事を通じてかなえたい夢がある」は64.3%から55.4%。「出世より起業したい」が23.4%から29.0%と畳み掛けるような回答が続く。
  これらの回答は職場への期待がさめたことで、職場に依存しない考え方が身に付くようだ。こうしたことから、若者の転職志向の高まりの根本原因は、若い社員の期待に応えられない職場・上司にあるのかもしれない。
●  人事評価など直面してない事項は変化ナシ
  「給与が各人の業績や能力で大きく異なる仕組み」を望むのは、65.9%から64.0%、「同期でも評価・能力で昇格に差がつく」を望むのは67.1%から69.0%、「スペシャリストを育てる職場」を望むが48.5%から46.2%、「ジェネラリストを育てる職場」が51.5%から53.8%などは半年後もあまり回答率が変化していない。その理由として新入社員はまだまだ処遇や人事評価に直面していないからだろう。
参考:財団法人社会経済生産性本部「2005年度新入社員 半年間の意識変化調査(2005年12月)」
(可児 俊信、(株)ベネフィット・ワン コンサルティング室、千葉商科大学会計大学院教授、
CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2006.01.10
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