>  今週のトピックス >  No.1168
「平成18年度税制改正大綱」の詳細
●  企業向けの税制改正
  昨年12月15日に、自民党より「平成18年度税制改正大綱」が発表され、今年の税制の大枠がほぼ決定された。以前にも「同族会社の役員報酬の一部損金不算入」については速報として詳細を解説したが(本欄「今週のトピックス」1160参照)、今回はそのほかの税制改正についてみていくこととする。
  まずは法人税関係の税制改正について、その内容を解説する。1つ目は、「交際費課税の見直し」である。今回の改正で、中小企業については一人当たり5,000円以下の飲食費(役職員間は除く)の損金算入が可能となる。これまではこういった明確な基準がなく処理する税理士や経理担当者によってその扱いが異なっていたため、実務においてもありがたい改正といえる。
  次に、「欠損法人を使った節税対策封じ」である。これは、平成18年4月1日以後の買収案件については、買収後5年以内に被買収法人(欠損法人)が従前の事業を廃止し、その規模を大幅に超える事業を開始した場合等一定の場合には、その欠損法人の損金算入を制限するというものである。さらには、資産譲渡損についても一定の制限を設けている。
  また、「同族会社の留保金課税についても見直しと延長」が行われるようだ。同族会社の留保金課税の不適用措置について、従来からあった「設立後10年以内の中小企業者」と「自己資本比率50%以下の中小法人」というものが廃止されることとなる。また同族であるかどうかの要件を、従来の3株主グループから1株主グループへと緩和の方向となっている。そして留保控除額についても緩和の方向で金額が基本的に引き上げられる。これは、以前から批判のある「留保金課税」のため、そういった批判に対して一定の配慮をした格好だ。
  ほかにも、「少額減価償却資産の取得価額の損金算入制度」が、合計300万円までという制限のもとに、期限が2年間延長される。また、「中小企業投資促進税制」や「研究開発税制」について、基本的に拡充の方向となっている。
●  個人向けの税制改正
  所得税や住民税、相続税などの個人向けの税制改正をみていこう。まずは、三位一体改革の流れから、国から地方への税源移譲が行われる。そして住民税がフラット化(10%)されることにともなう「住宅ローン控除適用者」に対する一定の調整措置も盛り込まれている。
  個人向けの税制改正の中で最も影響があるものとしては、「定率減税の廃止」がある。これは、昨年平成17年までは所得税で最大25万円、住民税で最大4万円の控除を受けられていたものが、平成18年からその控除額が半分になり、さらに平成19年からは残り半分もなくなるというものである。
  最後に相続税関係の改正項目としては、「物納制度の見直し」がある。これは、「物納許可基準の明確化」と「物納手続きの迅速化」、そして「延納から物納への変更を認める制度の創設」である。今まで「物納」というと、許可されるのかどうかということや行政側の手続きの遅さに実務では苦労することが多かったが、今回の改正が実現されることになれば「物納」がより広く行われるようになるであろう。
(今村 仁 今村仁税理士事務所代表、税理士、宅地建物取引主任者、1級FP技能士)
2006.01.10
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