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消費税免税点制度、ここに注意
●  消費税免税点制度とは
  消費税の課税事業者が増加している。国税庁によると2005年分個人消費税の確定申告件数は、前年の約3.8倍にあたる約157万6,000件に上ることが明らかとなった。納税申告額も4,901億円と倍増している(※)
  こうした変化の背景にある消費税の免税点制度、つまり消費税免税事業者制度について詳しくみておきたい。
  個人事業者であれば前々年、法人の場合は前々事業年度(これを基準期間という)の課税売上高が1,000万円を超える場合には、当年(または当事業年度)において消費税を納める義務が生じる。この事業者を課税事業者といい、逆に課税売上高が1,000万円以下であった事業者のことを免税事業者という。
  免税事業者は、文字通り消費税を納める義務を免除されることになる。ただし新設法人には特例があり、資本金額が1,000万円以上の法人については、基準期間がない1年目から課税事業者となる。3年目以後は原則どおり2年前の売上高で判定する。
●  免税事業者は原則、還付が受けられない
  ここで注意しないといけないのは、免税事業者は消費税を納めなくてもいい代わりに、たとえ消費税の還付が生じていても還付金を受け取ることはできないということだ。
  例えば今年、建物の建築費などで大きな支払いが発生し、それに伴って多額の消費税を納めたとする。この支払い消費税額が、売上の際に預かった消費税を超えていたとしても、免税事業者は消費税の還付が受けられないのである。
  ただし、そうならないための方法はある。事前に税務署へ「消費税課税事業者選択届出書(2年間継続適用とすることが要件)」を提出しておけば消費税の還付を受けることができるのだ。ぜひ覚えておいてほしい。
●  「棚卸資産に係る消費税額の調整」を忘れずに
  さらに免税事業者関連で押さえておかないといけないのは「棚卸資産に係る消費税額の調整」という制度である。
  免税事業者が新たに課税事業者となる場合、「免税事業者時代に課税仕入」して、課税事業者となる課税期間の初日の前日において棚卸資産を所有しているとき、棚卸資産に係る消費税額などを「課税事業者となる課税期間の課税仕入」とみなしてくれるというものだ。
  この制度の趣旨は、課税事業者である課税期間に販売をすれば当然に課税売上となり預かり消費税が発生して消費税納税となるのであるから、それに対応する課税仕入についても支払い消費税処理をするのが妥当であるというものである。
  課税事業者が免税事業者となる場合はその反対で、課税事業者である課税期間において期末在庫に係る消費税については、課税仕入から除く処理をしないといけない。
  事業を続けていく限り、消費税はついてまわると思われるので、消費税免税に関する税制の動向にはご留意いただきたい。
(今村 仁 今村仁税理士事務所代表、税理士、宅地建物取引主任者、1級FP技能士)
2006.05.29
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