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所得税の確定申告書提出数、過去最高に
●  還付申告者は1,196万人で過去最高
  国税庁によると、2005年分の所得税の確定申告書を提出した人は2,318万1,000人で前年を7.0%上回り、過去最高を更新した。
  要因は、老年者控除の廃止や公的年金等控除の上乗せ部分の廃止といった年金制度の見直しが2005年分から適用されたため、還付申告者が増加したことにある。また昨年は株式市場が好調だったことに伴い、株式などの譲渡所得者が増加したことも一因となっている。
  確定申告書提出者のうち、申告納税額がある人は前年に比べ11.5%増の829万4,000人、その所得金額は同8.8%増の43兆7,149億円、申告納税額は同11.1%増の2兆6,734億円だった。
  還付申告者は同10.6%増の1,196万3,000人で過去最高となった。申告納税額がある人や還付申告者数は1999年分以来の高い伸び率を示している。特に申告納税額は大幅増となったが、ピークであった1990年分の6兆6,023億円と比べると、その4割に過ぎない。
●  株式市場好調で株式等譲渡所得の申告が大幅増加
  所得税申告者のうち、譲渡所得の申告者は前年に比べ16.3%増の144万3,000人だった。このうち所得金額がある人は同33.2%増の86万5,000人、所得金額は同40.2%増の6兆6,955億円と、いずれも前年を上回った。
  これは、株式等譲渡所得の申告者が同34.1%増の90万人、うち所得金額がある人が同55.8%増の57万9,000人となったことが要因。これらの申告者を除く譲渡申告者は54万3,000人で、前年を4.7%下回っている。
  2005年分の贈与税の申告者は、前年と横ばいの43万3,000人、うち納税額がある人は同0.3%増の27万5,000人、その納税額は同18.4%増の1,166億円だった。1人当たりの納税額は42万円となる。
  贈与税の申告者のうち、2003年分から導入された相続時清算課税制度に係る申告者は8万2,000人、うち納税額があった人は5,000人、申告納税額は324億円だった。ほとんどが非課税枠2,500万円(住宅取得資金の場合は3,500万円)の範囲だった。
●  新規課税事業者117万人により消費税納申告件数は4倍増
  2003年度税制改正において事業者免税点が従来の3,000万円から1,000万円に、また簡易課税制度の課税売上高の上限が同5億円から5,000万円に引き下げられた。今年行われた個人事業者の消費税の確定申告は、この改正以来初めての申告である(※)
  国税庁によると、新規課税事業者は同庁が2005年12月末に推測していた122万人の96.2%に当たる117万4,000人となったことが分かった。
  この結果、2005年分の消費税の申告件数は、前年分(41万6,000件)の約4倍となる157万6,000件に上った。このうち納税額があった申告件数は同約4倍増となる152万7,000件で、納税申告額もほぼ倍増の4,901億円となった。還付申告件数も同3倍増の4万8,000件となり、総額約158億円が還付されている。申告件数の増加割合に比べ、納税申告額が低いのは、新規課税事業者のほとんどが小規模事業者であることを物語っている。
  これは簡易課税制度の選択割合にも表れている。新規課税事業者の中で、簡易課税を選択した割合は71.5%と非常に高かった。つまり新規課税事業者の約7割の84万社は、課税売上高が5,000万円以下だったということだ。なお課税事業者数全体における簡易課税制度の選択割合は、前年を7.7ポイント上回る63.1%だった。
  国税庁では現在、申告義務がありながら無申告と思われる事業者に対し、電話による確認を行っている。その結果課税事業者に該当すれば、申告を求めていく方針だ。
参考資料:国税庁「平成17年分の所得税、消費税及び贈与税の確定申告状況について」
(浅野 宗玄、税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2006.05.29
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