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経産省の税制改正要望、減価償却見直しと事業承継の円滑化が柱
●  100%償却や法定耐用年数の短縮を要望
  経済産業省・中小企業庁は8月25日、2007年度税制改正に向けた要望を公表した。減価償却制度の抜本的見直しのほか、中小企業の事業承継の円滑化を図る観点から、自社株式を後継者へ贈与する際に限って、相続時精算課税制度における親の年齢制限(現行65歳以上)を撤廃することなどが盛り込まれている。
  現行の減価償却制度については、技術革新などの変化に対応できないという不満が産業界を中心に根強い。主要国の中で取得価額の100%を償却できないのは日本だけだ。また現行制度では法定耐用年数が長い設備が多い上、法定耐用年数経過時点においても90%しか償却できない。
  そこで経産省・中企庁は、減価償却制度について(1)「償却可能限度額(95%)」を撤廃し、全額償却可能とするとともに、償却年数を諸外国に劣らないものに見直す、(2)企業にとって使いやすい制度に改める、(3)地方税についても、減価償却制度の抜本的見直しに合わせ、固定資産税の課税評価額の見直しなどを行う、との改正要望を示している。
●  相続税精算課税制度、事業承継においては年齢要件を撤廃
  中小企業における事業承継の円滑化については、相続時精算課税制度の拡充のほか、(1)非上場株式に係る事業承継税制の見直し、(2)種類株式の評価方法の明確化を求め、税制面から支援する考えだ。
  相続時精算課税制度とは、65歳以上の親から20歳以上の子への生前贈与について2,500万円の非課税枠を設け、これを超える部分は一律税率20%課税として税負担を軽減するものだ。相続時に精算することを前提に贈与税を軽減・簡素化している制度だが、贈与者の年齢要件(65歳以上)などの条件が設定されているため、中小企業オーナー経営者の事業承継を促進する制度としては不十分との意見がある。
  そこで、そのような経営者が後継者である子ども(経営に従事する役員に限る)に対して自社株式の贈与を行う場合には、贈与者の年齢要件を撤廃し、非課税枠を3,500万円に引き上げる案が示されている。
●  後継者の非上場自社株保有は課税を猶予
  また、中小企業の事業承継に際して特に重要な「非上場株式の相続税負担」については、後継者が非上場の自社株式を保有している間、相続税の課税を猶予するなどの方法で負担を軽減することを要望した。現行制度では、市場性のなさなどを理由に上場会社との比較で算出した株価から3〜5割の減額をし、後継者が相続で取得する株式は、この評価に対してさらに10%の評価減が行われたうえで相続税が課税されている。
  一方、後継者以外の相続人がいる場合は、経営権をめぐる争いを防ぐため、議決権のない株式について一定の評価減を行うことを要望した。現行の非上場株式の評価は議決権のある普通株式における方法を基準としているが、新会社法で多様な類型が認められた種類株式は個別評価とされている。従って議決権のない株式についても、予測可能性を高めるべく評価法の明確化を求めたものだ。
配当や議決権などの点で普通株式と違いがある株式のこと。「議決権のない株式」もこれに該当する。
参考資料:「平成19年度税制改正に関する経済産業省意見」
(浅野 宗玄、税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2006.09.04
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