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被災時の消費税簡易課税届出、今年度から特例適用に
●  7月豪雨を激甚災害に指定
  7月中旬から下旬にかけて鹿児島県や長野県などを中心に、想像をはるかに超える大雨が降り、多くの犠牲が出たことは記憶に新しい。家屋が濁流に飲み込まれ、流されていく様がニュースで繰り返し報道された。
  政府は9月8日、気象庁が「平成18年7月豪雨」と命名したこの災害を「激甚災害」に指定することを閣議決定した。今回のように通常の日常生活や企業活動に著しく影響を及ぼす災害に対しては、激甚災害制度という特別の扱いが用意されている。過去には、三宅島の噴火や2004年の新潟県中越地震が激甚災害に指定された例がある。
●  激甚災害制度とは
  激甚災害制度とは、政令により指定された災害に対して、一般の災害復旧等の支援措置に加え、激甚災害法に基づくさまざまな特例措置を適用するものだ。例えば被災地域の中小企業の場合、信用保証協会の保証付融資を通常枠とは別枠で利用でき、保証料率も通常の半分以下となる措置などが利用できる。
●  簡易課税では消費税の還付が受けられない
  個人事業者や中小企業が上記のような災害にあった場合、注意すべきなのが消費税の取り扱いである。被災後、元通りに営業を再開するまでには多額の設備投資が必要になるだろう。
  そのようなケースでは通常、消費税が還付されるケースが多い。しかし事業者が簡易課税を適用している場合は、売上高から消費税が計算されるため、還付の適用を受けることができなくなってしまう。還付の適用を受けるには、それまでに2年以上簡易課税を適用している場合に限り、適用を受けようとする事業年度開始の日の前日までに、「簡易課税選択不適用届出書」を提出しておく必要があるからだ。
  これまでにも、災害に遭った場合の消費税の届出書の提出時期に関する特例はあったのだが、認められるのは「届出書の提出期限(すなわち、適用を受けようとする事業年度の前事業年度末)までに災害などが発生し、やむを得ず届出書を提出できなかった」という場合だけだった。事業年度の途中で災害が発生し、その事業年度で還付の適用を受けたいと考えたとしても、すでに届出書の提出期限が過ぎていると、従来の特例では対応できなかったのである。
●  災害等が発生した場合の特例の新設
  しかし今年の税制改正で新設された制度により、それが認められるようになった。
  具体的には、災害等のやんだ日から2カ月以内に特例承認申請書を提出した場合に限り、2年以上簡易課税を適用していたか否かに関わらず、その事業年度から原則課税に戻り、還付の適用を受けられるようになったのである。
  災害後は復旧作業に追われ、そんなところまで気が回らないというのが正直なところかもしれない。しかしそういう時こそ、申請書の提出は忘れず早めにしておきたい。というのも、「災害等のやんだ日」という判断が難しく、正確な期限が特定しにくいためである。
  なお免税事業者が事業年度途中で災害に遭った場合、この特例措置は適用されない。たとえ、その事業年度で多額の設備投資があったとしても、消費税の還付を受けることはできないので注意されたい。
●  災害の場合の税務上の特例
  災害に遭った場合、上記のほかにも以下のような特例措置が用意されている。所轄税務署長に申請書を提出することにより適用を受けることができるので、参考のため記しておく(※)
  1. 申告・納付期限の2カ月延長

  2. 災害を受けた場合の所得税の軽減・免除
    所得金額1,000万円以下で災害による住宅又は家財の損害割合が1/2以上の場合、所得金額に応じ、所得税が全額、1/2、1/4免除

  3. 雑損控除
    2を適用しない場合、以下のうち大きい金額を所得控除
    (1)差引損失額−総所得金額×10%
    (2)差引損失額のうち災害関連支出の金額−5万円

  4. 災害等を受けた場合の納税猶予
    財産の20%以上の損失を受けた場合、最大で3年間の納税猶予が可能

  5. サラリーマン、公的年金受給者等が災害を受けた場合の源泉所得税の徴収猶予及び還付
    所得金額1,000万円以下で災害による住宅又は家財の損害割合が1/2以上の場合、所得見積額に応じて源泉所得税が一定期間徴収猶予又は還付される
    (所得金額1,000万円を超えているか、損害割合が1/2未満の場合にも、徴収猶予が認められる場合がある)

  6. 災害を受けた場合の所得税の予定納税額の減額申請
(※) 2、3の詳細については次の関連記事を参照されたい。
関連記事…今週のトピックスNo.1276 「豪雨被災者に税制上の救済措置  国税庁」
(村田 直、マネーコンシェルジュ・今村仁税理士事務所)
2006.09.19
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