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実質一人会社規制の要件緩和や電子申告特別控除を創設
〜2007年度与党税制改正大綱を決定〜
●  設備投資額の100%まで償却可能に
  与党は12月14日、2007年度税制改正大綱を決定した。経済活性化に向けて、設備投資の全額を損金算入できるように減価償却制度を40年ぶりに抜本的に見直すなど、企業減税が中心となっている。焦点となっていた証券税制における株式譲渡益と配当に対する10%軽減税率は、適用期限を1年延長した上で本則税率(20%)に戻す。
  減価償却制度については、今後(2007年4月1日以後)取得する資産について、残存価額(10%)を廃止し、法定耐用年数経過時点で100%まで償却可能な制度とする。また、現行制度では、資産を除却しない限り、償却可能限度額(取得資産の95%)までしか償却できないが、この償却可能限度額も撤廃する。現行制度で95%まで償却が進んだ資産については、事後5年間で全額(100%)まで均等償却できることとする。
●  実質一人会社規制の適用除外基準所得金額を倍増
  今回は中小企業向けの減税も小粒ながら注目される。特定同族会社の留保金課税の対象から資本金1億円以下の中小企業を除外する。2006年度改正で創設された特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度、いわゆる実質一人会社規制については、適用除外基準である基準所得金額を1,600万円以下(現行800万円以下)に引き上げる。適用は、2007年4月1日以後開始する事業年度からだから、今事業年度の適用除外基準は800万円以下となるので注意が必要だ。
  また、取引相場のない種類株式の相続などの評価方法が明確化される。種類株式については、(1)配当優先の無議決権株式、(2)社債類似株式、(3)拒否権付株式という、中小企業の事業承継において活用が期待される典型的な3類型の評価方法を明確化する。例えば、配当優先の無議決権株式は、普通株式と同様に評価することが原則だが、相続時の納税者の選択により、相続人全体の相続税評価総額が不変という前提で、議決権がない点を考慮し、普通株式評価額から5%を評価減することも可能とする。
  さらに、中小企業の円滑な事業承継のため、取引相場のない株式などに係る相続時精算課税制度を創設する。受贈者が、2007年1月1日から2008年12月31日までの間に取引相場のない株式などの贈与を受けた場合は、60歳以上の親からの贈与についても、一定要件の下で、相続時精算課税制度の適用を認め、2,500万円の非課税枠を500万円上乗せし3,000万円とするなどの特例を設ける。
●  インセンティブ効果弱い電子申告特別控除
  一方、円滑・適正な納税のための納税環境の整備のなかでは、電子申告普及のためのインセンティブとして電子申告特別控除が創設される。電子証明書を取得した個人が、2007年度分または2008年度分の確定申告を電子申告で行った場合は、所得税額から5,000円を控除する。
  低迷する電子申告利用の大きなインセンティブとして期待したいところだが、なぜか個人の申告に限られ、5,000円を税額控除する適用年も1年分だけとなれば、その効果は未知数といえる。電子申告における第三者作成書類の添付省略や、税理士が納税者の代わりに電子申告した場合などの電子署名の省略なども盛り込まれたことから、環境整備面では大きく前進したといえるが、電子申告普及のインパクトにはなりそうもないとみられている。
参考:与党税制大綱の詳細は下記URL
http://www.jimin.jp/jimin/seisaku/2006/pdf/seisaku-030a.pdf
(浅野 宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2006.12.25
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